標準モデルの計測

石井式ページでの部屋の座標の説明

 今後の話を進める上で、スピーカ位置、マイク位置などの位置情報は座標で示します。部屋の各寸法を10等分して、おのおのに0から10までの番号をふります。部屋を縦長に使った場合を基準として、L0は前、W0は左、H0は床面でH10は天井面の高さとなります。(下図参照)

部屋の座標説明図
部屋の座標
例(L5-W5-H5)は図のように部屋の中心になる
Fig.2-5A

 

標準モデルの計測

 前ページでの実験を経て、部屋の中で起こる音波の振る舞いを出来るだけシンプルな形で確かめるために、標準的な6畳、8畳、10畳、12畳のモデルの計測を行いました。全くの標準状態を作り出すために、壁は15mm(実寸なら150mmになる)シナ合板を利用した箱を想像していただければ良いでしょう。内部には計測用のスピーカとマイク以外は何も置いていません。

 計測ポイントは部屋のL0,W0,H0から始まり、10等分の座標区切りのすべてを計測しています。この計測に用いたのは、 模型実験のページ写真 のある計測用マイクを使っていますが、このマイクの台座にはプーリーが取り付けられ、計測ポイントを縦に移動できるように、レールを配置し、記録紙と連動して計測ポイントを移動できるように工夫されています。
 さらに計測に用いた周波数は、基準モードにより求められた周波数ならびに、基準モードから外れた周波数までをカバーしています。

 部屋サイズの違う4つの模型、基準モードとそれ以外の周波数を各座標ごとにデータを取った結果、データ量は膨大になりますので、そのすべてをご紹介することは出来ません。ここではそのごく一部ですが、10畳モデルの基準モードにおける3つの計測例を掲載します。

 10畳モデル: 45cm(L)X36cm(W)X24cm(H)
 スピーカ位置: 0L-2W-0H
 マイク位置 : 0〜8Lを走査-5W-5H

走査グラフ:380Hz
周波数380Hz
Fig.2-5B

走査グラフ:750Hz
周波数750Hz
Fig.2-5C

走査グラフ:1140Hz
周波数1140Hz
Fig.2-5D

 グラフに添付されている周波数は、計測そのままの数字です。これを実寸大の部屋と想定するとおのおの、38Hz、76Hz、114Hzとなります。これはオーディオ再生にとって低域の重要な部分で、基準モードの周波数では位置関係によりこのような音圧分布があることを知ることができます。基準モードに当てはめると、上からぞれぞれ(1-0-0)、(2-0-0)、(3-0-0)となります。

 これらの図、特にFig.2-5Cを見ていただくと、 定在波のページで示した定在振幅の図 (Fig.2-2A) の様子に共通する部分があることに気づきます。もちろんFig.2-2Aの下側のグラフは、振幅の状態を表し、Fig.2-5Cは音圧を表していますが、基準モードで反射が多く発生し、振幅が大きくなることによって、上図のような大きな音圧差が発生していることがよく分かります。また、その音圧が急激に下がる位置は座標2.5と7.5であり、振幅が「ゼロの位置」とぴたりと合うこともここから理解することができます。

 この音圧分布の様子は、このほかの座標でも縦(L)方向に測っていくと同じような音圧分布を見ることができます。つまり、このような1次元モードの周波数での音圧分布は、そのモードの基準となる(この場合縦(L))方向に対して、面状に変化が現れます。これは定在波が平面上に現れている事になります。特にこの分布で音圧ゼロとなるポイントを「節」と呼んでいますが、これが面状に展開しているので、特に「節面」と呼んでいます。

 この節面は上図のような(1-0-0)から(3-0-0)といったような同一方向のモード周波数を上げていった場合や、1次元モード、2次元モード、3次元モードなどいった次数の違いで節面の現れる場所や数が異なります。次回は、いろいろなモードで、この節面の現れる様子を説明します。

*****  HOTEI  *****
Oct.28.2000
Aug.20.2003改訂

 

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