模型実験
模型実験の実効性の確認

 実際の部屋で観測できる伝送特性がどのような要因で引き起こされるのかは、実際に部屋の各部で音波がどのように振る舞うのかを、細かく観測する必要がありますが、これを実際に行うとなると、計測を行う部屋が数多く必要になりますし、家具などの影響を排除することも難しく実現には多くの困難が伴います。
 もし、これを寸法を縮小したスケールモデル(模型)に置き換えることができるなら、数多くの部屋モデルを同じ条件で計測することが可能になります。そこで、石井式ではスケールモデルによる部屋の計測の採用を検討しました。

 模型を使って検討するには、その手法で有効なデータを得られるかを検証しなければなりません。つまり実際の部屋と模型の特性が一致しなければ、そこから先の計測は意味をなさないことになります。そこで、石井さんはご自身の部屋のモデルを作ることから始めました。下の写真が石井さんの部屋の模型で、その下が計測用マイクと計測に使われるスピーカです。

模型:石井さんの部屋の1/10モデル
石井さんのリスニングルーム1/10モデル
右側にスピーカ、左よりにソファーなどの家具
が実物通りに配置されている。もちろん、この写
真は天井部を外して撮影されている。
Photo2-4A

(左)計測用マイク:(左)計測用スピーカ
計測マイク(写真左)計測用スピーカ(写真右)
スピーカ左が38cmウーファを持つSB-M1
スピーカ右が30cmウーファを持つスピーカを
1/10スケールモデル化している
Photo2-4B

 ごらんいただけばわかるように、スピーカ、ソファ、ピアノなどの家具まで10分の1で精密に再現されています。これは実測のために家具を部屋から出すということが非現実的なため、逆に模型の中に家具を配置することで、部屋の内部を同じ条件にしようとしたものです。

 こうやって、実測とスケールモデルの特性が一致すれば、ここから先の基準となるモデルの計測も信頼性が保てます。
 条件はすべてが10分の1ですから、計測に使うSB-M1のウーファが実寸で38cm、模型のスピーカは3.8cmとなります。また計測する波長は10分の1ですから、周波数は10倍になり、100Hzは1kHzと読み替えることになりますが、実験用記録紙の記録開始位置で調整をしていますので、記録上は同じように見ることができます。
 このようにして部屋のさまざまな場所で実際の部屋と模型の計測を数多く行い、その結果を見比べることで模型実験の有効性を検証しました。
 こうやって計測した結果の一つが、Fig.2-4Cのグラフです。

実測と模型の伝送周波数特性グラフ
実測(上)と模型(下)の計測結果
Fig.2-4C

 上が実物の周波数特性、下がモデルを測ったものです。このように実物と模型の特性はピークの高さなどがわずかに違いますが、そのピークやディップの現れる周波数などは非常によく一致していることが解ります。そのほかの多くの計測結果と合わせ、実物を模型に置き換えて実験を続けても有効なデータを集めることが可能であることを確認できたのです。

*****  HOTEI  *****
Oct.28.2000

 

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