基準振動モード |
一般家庭の部屋でオーディオを聴く場合、低い周波数では音の波長が部屋の大きさと同じか、それより長くなるので、部屋の中の音波の振る舞いは波の性質に近くなりますが、数100Hz以上では波長が部屋の寸法よりかなり小さくなるので音波の振る舞いは光の性質に似てきます。 このように比較的高い周波数ではその性質上、吸音などの処理も行いやすい帯域とも言えますので、伝送特性に多少のデコボコがあっても、それなりに対処は行えるケースが有ります。しかし、低音域では吸音などのコントロールもより難しくなるために、低域における音波の振る舞いを理解しておくことが、重要になってきます。 基準振動モードとは この章の冒頭「部屋の伝送特性のページ」で実際の部屋にスピーカーを置き、リスニングポイントからその伝送特性を見たとき、このデコボコがどうして起こるのかという疑問を提起しました。このデコボコは結論から言って基準振動モードの影響によるものということが解っています。固い壁に囲まれた直方体の部屋の中の音について、波動方程式を解くと以下の基準振動モードの式が得られます。 この石井式研究の説明ではすべてにわたって以後、部屋の長辺を(L)、短辺を(W)、高さを(H)と表現することにします。今後、部屋の長辺側にスピーカをセッティングする手法も説明の中にありますが、そのときでも部屋の長辺を(L)、短辺を(W)といたしますので、お気をつけください。また、この記事中で使われる音速は340m/秒ですべての計算を行っています。
上記の式では、基本的に部屋の寸法(L,W,H)がパラメータとして存在しますが、基準振動モードとは、部屋の寸法ごとによるその部屋の特徴、固有振動モードを表していると言うことになります。 そしてこの計算式から得られた日本式の標準的な6畳、8畳、10畳の場合について低い方から10番目のモードについて示したのが下の表です。
この表で見ると、それぞれに一番低い周波数は(1,0,0)で、2番目は(0,1,0)になっていますが、この後のモードの順番はLとWとHの比率によって変わってきます。また8畳では、LとWの寸法が同じになるために、二つのモードが同じ周波数になっている様子が分かります。 さて、この基準振動モードの周波数で何が起こっているかと言うことですが、定在波のページで説明したように、定在した振幅が何度も反射を繰り返すことにより、共振現象を起こし、部屋の特定の場所で音圧があがったり、下がったりという現象を観測出来るようになります。石井さんはこの様子を実際に測定で確かめるために、模型実験という手法を採用しました。これにより、基準モードと部屋の各場所での伝送特性がどのようになっているのかが、よりはっきりとしてきました。次回はこの模型実験の様子を説明しようと思います。 ***** HOTEI *****
|