10畳間の節面
基準モードによる節面

 一次元、二次元、三次元のページで各モードにおける音圧分布を見てきましたが、これを10畳間の下から9番目のモードまでを節面を図で表した物がFig.2-9Aです。

10畳間の節面
10畳間の各モードの節面
Fig.2-9A

 これらの基準モード周波数の節面では、理論上音圧はゼロになります。たとえば、部屋の長さ方向の真ん中にある(L5)の節面上にリスニングポイントを置くと、37.9Hz(1.0.0)、60.5Hz(1.1.0)、85.1Hz(1.0.1)、93.1Hz(1.1.1)および、その上のモードでL5に節面のある物は、すべて聞こえないと言うことになります。もし、リスニングポイントをL5、W5、H5の部屋に対して中央に置いた場合、上図では(2.0.0)以外では、すべて節面が存在することになり、それらの周波数は聞こえないか非常に聞き取りにくいということになります。

 それらの様子が伝送周波数特性にどのように現れるかを示したのがFig.2-9Bです。グラフの上側に現れる実線では各モードの音圧が大きくなっていますが、これはスピーカをL0,W0,H0に、測定マイクをL10,W10,H10に置いた場合で、ここではすべてのモードが伝送されている様子が分かります。その下点線(少しわかりにくいですが)で表されているのは、スピーカは同じ位置のままマイクをL5,W5,H5に置いた場合で、節面が通らない(2.0.0)以外で、音圧が大きく下がっているようすが見えます。
 理論上では点線のモード周波数に該当する場所は音圧が限りなく低くなるはずですが、模型実験に用いているマイクのダイアフラムは、実寸で6mmとなっており十分小さいはずですが、1/10模型を想定すると実際は60mmも有ることになります。その結果ポイントの厳密さに少し問題があり、測定誤差があると判断しています。

マイク位置による伝送特性
マイク位置による伝送特性の違い
Fig.2-9B

 このように部屋のコーナではすべてのモードが聞こえ、部屋の中央部では低域は非常にわずかしか聞こえません。また、部屋の壁がしっかりと反射を行うような固い壁(反射率が大きい)の場合この音圧差が大きく、音が部屋の外に抜けてしまうような(たとえば襖や障子など:反射率が低い)では、音圧差が小さくなります。また、基準モードの波面は今まで見てきたように平面を形成していますから、よく見られる部屋のコーナー吸音が低域の基準モード、つまり定在波対策にはほとんど効果が無いことが理解できます。もし、効果的に吸音を試みるなら、節面が形成されるポイント(音圧は下がるが、空気の粒子速度が最高に達する箇所)を吸音した方がよいという事になります。もちろん、これは部屋の中央部など節面が位置するため現実的な方法ではありません。

 また、スピーカとマイクの位置が変わっても、特に低域伝送特性は変化がありません。たとえば、Fig2-9Bでは、L0,W0,H0にスピーカを置き、L10,W10,H10L5,W5,H5にマイクを設置していますが、この関係を逆転しても伝送特性に大きな変化は現れないことが実験により解りました。
 従って、低域伝送特性を考えた場合、スピーカもリスニングポイントも出来るだけ基準モードの節面が通らない場所に設置することが、好ましいということが解ります。

 次回は、これらの事柄から四角い部屋でのスピーカ、リスニングポイントをどのように設定すればよいかについての考察を説明することにします。

*****  HOTEI  *****
Dec.11..2000
Aug.20.2003改訂

 

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