部屋の形状(1)

鏡像法

 石井式の部屋を作る場合、部屋の形状と吸音部の配置が問題になります。これを考える上で役に立つのが、以下に紹介する鏡像法です。これによれば、スピーカ側を広くしたら良いのか、リスナー側を広くしたらよいのかといった部屋の形を決める際の手がかりを与えてくれますし、スピーカ側を吸音にしたら良いのかリスナー側を吸音にしたら良いのかとかと言った吸音材の配置に対する答えを得ることができます。

壁面による反射波の様子

 前ページで残響時間の説明を行いましたが、この残響は部屋の各壁が音波を反射することにより音波が部屋の中をいきかい、そのエネルギーを消費するまで続きます。この反射波がリスナーに届くまでの様子を石井式では壁を鏡面に見立てた手法でより感覚的に理解しやすい鏡像法を考案しました。鏡像法の説明をするために、まず壁が一つ。反射を単純な形で到達する場合を例にとります。Fig.1-3Aは、ちょうどその様子を表しています。

壁が1つの時の反射の様子

 次に、壁面を鏡のように反射するものとして考えると、ちょうどFig.1-3Bのように鏡の中に仮想のスピーカが存在するかのように考えることができます。

壁を鏡面として鏡像を見る

 このときの反射音源側のスピーカは、その向きをこの図のように、中心軸がリスナーから外れていますので、その角度による指向特性の影響も見て取れますし、壁の音響特性 (コラム参照)も考慮しておく必要があります。 しかし、この後行われる複数の壁と、その反射を考えていく上で、非常に単純化できる手法であるといえます。

 次に2つの直交した壁が存在する場合がFig.1-3Cになります。この場合は、一回の反射だけでなく、2回反射によってできる(A'12)の鏡像を見ることができます。ちなみにこのときのスピーカの向きに注意してください。壁の向こうに見える鏡像のスピーカは、リスナーに後方を見せていることに気づくでしょう。

直交する2つの壁の場合

 また、A'1とA'2は壁が一つの時と同じようにそれぞれの壁の反射損失の影響を受けますが、A'12の反射音源は2つの壁で反射した結果その二つの損失が有ります。

 2つの壁の関係はこのほか向かい合う壁が有りますが、ここでは平行な壁を想定してFig.1-3Dに図示します。(平行を崩した場合は、部屋の形状(3)で説明します)

平行する2つの壁が有るとき

 2つの平行な壁が存在する場合は、このように音源が左右に一列に広がります。鏡像が互いに反射を繰り返し、その反射波は、壁の音響特性による影響と、距離による減衰で音圧が下がるまで何度も反射していることが想像できます。また、図の矢印はスピーカの指向軸を表していますが、その方向が反射するたびに反転していることに気づきます。

 3つ以上、そして3次元での反射の様子は、次のページで紹介します。

*****  HOTEI  *****
Oct.1.2000

 

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