残響時間の計算
残響時間とは

 長くオーディオをやっている方々の中には、残響時間という言葉を聞いた方も多くいらっしゃるでしょう。この残響時間というのは、「音が鳴り終わった瞬間から、その音圧が60dB減衰するまでの時間」を指し、コンサートホールなどは2秒ほどと長いものがありますが、我々がリスニングルームとして使う部屋の規模ではその部屋の大きさにもよりますが、せいぜいコンマ数秒というのが普通です。

 さて、以下に示すグラフ(Fig1-2A)が部屋の各容積に対応した推薦残響時間です。

Fig.1-2A 部屋のサイズと残響時間のグラフ

 一番上のラインがクラシック、2番目のラインがジャズやポップスと書かれていますが、これは従来クラシックは長め、ジャズポップスは短めが良いと言うことで、与えられた推薦値です。従って、使い手の好みや嗜好によって、目標設定は異なってくることを念頭に置かなければなりません。また、石井式では基本的に質の良い残響を得られるところから、少々長めでも気持ちよく聴くことができますので、このグラフはあくまで推薦値としてとらえていただければ良いと思います。

 ちなみに、下の二つのラインは、劇場用THXの規定値で、上の二つのラインと比べて短めの残響時間に設定されていることが解ります。これは映画作品に使われている、ドルビーデジタルやDTSといったサラウンド方式の場合、あらかじめ設定された音場を、どの劇場でも同じように再現する事を目的としているので、長い残響を必要としていないからです。これから考えて、音楽中心ではなく、映像中心としたホームシアターでは残響が短めの方が良いと言うこともできますが、映像作品は映画などだけではなく、音楽ソフトなども多く存在しますから、適度な残響は必要であるとも言えます。もし、音楽も、映像もそれに適した状態で楽しもうとした場合、石井式では従来法ではまず不可能であった、可変残響方式を比較的簡単に設定する事も可能になっています。

 

部屋の残響時間設定

 上記の図から目標となる残響時間を割り出すことが可能となりますが、それを部屋の設計に反映するためには、部屋全体の内面積に対する吸音部分の面積の比、これを平均吸音率と呼びますが、これを計算によって算出します。

 残響時間と平均吸音率の関係は以下のEylingの式と呼ばれる(1)式を使いますが。この式は平均吸音率から残響時間を求める式なので、変形して(2)式を使い、目標残響時間から平均吸音率を算出します。

残響時間と平均吸音率の関係式

 石井式は単純に反射部と吸音部しか存在しませんので、吸音部面積は(3)式のように全内面積に平均吸音率を乗じて求めます。

 以上は、あくまで部屋の設計に関わる平均吸音率を求めるための基本ですが、実際はこのような面倒な計算を行う必要はありません。
 これは、多くの計算結果から、通常の寸法比(たとえば標準的な日本的な6畳間の寸法は大体同じという意味)であれば、Fig1-2Aのグラフにある4本の曲線が平均吸音率に対し一定の値にほぼ近いことが解ったからです。

 グラフの一番上のクラシック用では平均吸音率が0.15、ジャズポップス用が0.22,THX用アッパが0.32,ロアが0.48になります。先に説明したとおり、平均吸音率が部屋の内面積に対しての吸音面積に等しいことが解っていますので、音楽用の平均吸音率0.15はすなわち、容積の異なる部屋でも、部屋の内面積の総和に対して吸音面積を15%〜22%にすることで、音楽観賞用の推薦値に近い残響特性を得ることができるという、明快で単純な答えが出ています。

*****  HOTEI  *****
Oct.1.2000

 

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