FAQ よくある質問

Q6:ステレオサウンド誌147号に掲載された標準スピーカーを使った新しい測定法について、詳しく教えてください。

A6:
 
ステレオサウンド147号(2003年夏号)で発表された新しい測定法は、現実的に入手できる小型スピーカーシステムを用いて、20Hz付近までの部屋の伝送特性を正確に知るために大変有効な手法だということができます。

 部屋の伝送周波数特性を測定するためには、20Hzから20kHzまでフラットに再生でき、部屋のコーナーに近づけ測定するためにコンパクトでハンドリングが良いことが条件となります。しかし、現実にそのようなシステムは存在しません。そこで、標準とする小型スピーカーを特定し、そのスピーカーの逆特性を測定器側で演算により作成、実際に測定した部屋の測定データに乗算することで見かけ上フラットな仮想スピーカーによって測定した結果と見なすことができます。この発想により部屋の正確な伝送特性を得ることが可能となりました。

 今回使用したスピーカーは20cm口径のハニカム平面ウーファーユニットを搭載したTechnicsの2ウェイ・スピーカーシステムで、密閉型エンクロージュアを採用し、以下の周波数特性図のように100Hz以下がなだらかに減衰していますが、20Hz付近まで音圧を確保しています。


標準スピーカーの周波数特性
今回標準スピーカーとして使用するにあたり、あらためて無響室で測定を行なった。

 次に測定器側の演算機能を用いて標準スピーカーの逆特性を計算し記憶させます。


標準スピーカーの周波数逆特性
注:周波数軸表示が20Hzから20kHzまでに変更されています。

 以上の操作で準備は完了。あとは、標準スピーカーを測定対象の部屋に持ち込み測定した結果に上記の逆特性を乗算します。


実測値(黒線)と補正後((青線)の特性

 これは、実際の6畳間での測定結果ですが、標準スピーカーを使用した場合実際は黒線のような伝送周波数特性になるわけですが、もし標準スピーカーが20Hzの最低域までフラットな特性を有しているなら、青線のような伝送特性になることが判ります。もし従来のように黒線だけの実測値で部屋の特性を判断すると、50Hz以下の谷はスピーカーが原因なのか、部屋が原因なのかの判断に迷うところです。しかし、この部屋の伝送周波数特性は十分に低い帯域までしっかりとしたレベルを確保しながら再生可能だということが補正を行なった青線によりはっきりと理解することができるようになりました。

 標準スピーカーについては現在もなお検討中で、今回の使用したものをさらに精度を確保するため、エンクロージュア形状などさまざまな検討を加えています。その結果は、今しばらくお待ちいただく必要がありますが、すでにアイデアができあがり、鋭意製作中です。

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Q7:標準スピーカーを通常置くことのない部屋のコーナーにおいて測定していますが、これはどういった理由からでしょうか?

A7:
 測定マイクの位置によってピークやディップとなる基準モードは変化しますが、そのすべての基準モード周波数を駆動できるポイントが部屋の各コーナーになるからです。
 また、どの部屋においてもコーナーを基準とすることで、相対位置的な比較が可能になりその部屋特有の特徴をつかみやすく、また基準モードでディップの発生する節面のズレを見るにも非常に都合の良い場所といえます。

 もちろん、実測においては部屋のコーナーだけではなく、通常スピーカーを置くであろう伝送特性に優れた位置での計測も同時に行なうことはいうまでもありません。

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*****  HOTEI  *****
Jul.3.2003