既存の部屋での改善例
HOTEIの部屋でセッティングの見直し

 前章の低域伝送特性編で部屋の中における低音域の振る舞いが少しずつ解明されてきましたので、さらに実際の部屋でもその特徴と合致するのかを試してみるため、私の部屋を実験台に様々な改善を試みてみました。

 Fig2-1Aのグラフは低域伝送特性編の冒頭に掲載した私(HOTEI)の部屋のリスニングポイントから計測した伝送周波数特性です。

HOTEIの部屋の伝送周波数特性(改善前)

 ごらんのように、70Hz以下で大きく落ちこんでおり、聴感では低域は比較的たっぷりしていますが、どこか解像度が悪く、最低域が頼りないために、本来グランドピアノで演奏されているはずの演奏がアップライトピアノのように聞こえるという話は前章の冒頭で書いたとおりです。

 低域の伝送特性を改善し、低域の解像度やグランドピアノがそれらしく聞こえるためにはどうすれば良いのかを検討するために、まず現状を知る必要がありました。Fig.2-Aの伝送特性図は改善検討のために計測された特性の一部で、実際は部屋の各所で数多くの計測を行っています。lこれは実際の部屋で節面がどのような影響を与えているか計測と聴感で確かめることにもなります。

HOTEIの部屋配置図(改善前)
HOTEIの部屋の配置図
(改善前)
Fig.3-1A

 Fig.3-1Aはこの章でご紹介する改善を行う前の状態です。リスニングポイントの後方は押入で、建具の表面は塩ビの化粧合板です。これは壁全体にわたり同一の素材となっています。押入を除いた部屋の広さは12畳で、Lが5.33m、Wが3.5m、Hが2.45mとなっています。
 家屋全体は在来工法の木造土壁で、部屋は2階にあります。図の左壁、下壁は外壁に面し、押入の奥壁も同じく外壁に面しています。上の壁右半分は隣室との間仕切りで、隣室が日本間のため外壁ほどの厚みはないもののここも土壁となっています。左半分は廊下との間仕切りにあたり、ここは化粧合板だけのタイコ状態になっています。

 低域伝送特性編では、すべての壁が均一な部屋を基準として、模型実験を行ってきましたが、既存の部屋をいろいろ調べていく内に、すべての壁が同じ条件になっていることはきわめて少なく、RC構造(鉄骨コンクリート)の家屋などでも、コンクリートの外壁に面した壁と、隣室や廊下に面した間仕切り壁では質量なども大きく異なるため、低域反射の様子が基準の部屋と少しずつ異なるケースが多くなります。また、HOTEIの部屋に見られる押入や最近多くなってきたクローゼットなどは場合によっては、低域伝送特性に大きな影響を与えるケースも考えられます。

 この後ご紹介する改善にあたって部屋の改造などは一切行っておらず、スピーカとリスニングポイントの検討を模型実験で行い、実際にそれを適用するという手法で、模型制作以外はコストの全くかからない手法で行われたました。通常の部屋そのままの状態ですので、特性的な問題点をすべてクリアしたわけではありませんが、改善後の状態は非常に満足を得られるレベルに達しています。
 次ページから順を追って、その様子をご紹介することにいたします。

*****  HOTEI  *****
Jan.5.2001

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