現在の石井式リスニングルーム
低域伝送特性を考慮した最新設計による石井式の現状

 さて、基礎編の最後として現在の石井式について説明します。

 反射と吸音の二つの要素によって組み立てられる石井式の基本にはまったく変わりはありませんが、部屋の形状、特に低域伝送特性についての研究が進んだおかげで最も理想的なリスニングルーム設計手法が明らかになってきました。

 まず、部屋のプロポーションを決める寸法比は、1:0.845:0.725で、部屋の再長辺を「1」として表わしています。これは日本の6畳間に比較的近い寸法比で実際に計測を行なうと6畳間は非常に良好な伝送特性が得られることが判明しました。もちろん6畳間を超える大きな部屋になると寸法比にあわせ天井も高くする必要があります。もし、その天井高が確保できない場合は、スピーカー配置にある程度の制約がありますが、その部屋ごとに伝送特性の良い場所を探すと言うことになります。音楽再生のスケール感まで考慮するなら、この寸法比を実現しさらに可能な限りエアボリュウムを大きくすることが理想的となります。

 この寸法比は、低域伝送特性編で詳しく述べられる基準モードの周波数軸分布を詳しく調べ、その周波数間隔から標準偏差を求めることで得ることができました。また、その寸法比が実際の伝送特性上でも良好な形になっているかは、伝送特性のシミュレーションソフトで総当たりに演算、さらに模型実験などでも検証が行なわれています。

寸法比によるシミュレーション図
fig1-6A
寸法比の違いによるそれぞれの伝送特性シミュレーション
スピーカー位置と測定ポイントを固定し、部屋の寸法比が変
化した場合の伝送特性をシミュレーションしている。
図をクリックすると拡大表示されますが、図面全体を見渡せるように
A4サイズで印刷できるように調整しています。したがって画面表示で
は大きく表示されますのでご注意ください。

部屋の形状

 鏡像解析等でさまざまな部屋の形状を検証してきましたが、現在の石井式ではシンプルな長方形の形状を推薦しています。ひとつは、上記の寸法比から求められる理想的な低域伝送特性と壁を傾斜させることで伝送特性がより複雑になる傾向が見られるため現在では単純な長方形を採用しています。以下の図面は最近の石井式リスニングルームの展開図です。また間柱を採用した吸音部設計により吸音層は10cm、反射部の板厚は5cmとなっています。

 

石井式リスニングルーム設計例展開図
fig1-6B
石井式リスニングルーム設計例展開図
中央部は床ではなく天井の吸音部配置を表わしている
反射部材質は天然木質系素材で、吸音部はジャージクロ
スでカバーされています
図をクリックすると拡大図を見ることができます。

*****  HOTEI  *****
Jul.19.2003

 

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