石井伸一郎さんからのごあいさつ
 

 石井式リスニングルーム研究ページ開設にあたって、石井伸一郎さんからメッセージをいただいていますので、ここにご紹介させていただきます。

*****  HOTEI  *****


ごあいさつ

 この度、松浦さんがオーディオリスニングルームについてのホームページを作ることになり、小生はもろ手を挙げて賛成し、全力で応援することにしました。と、言うのはオーディオ再生にとって、非常に重要なオーディオルームの特性が我が国ではあまりにも軽視されているからです。

 そして部屋が原因で期待通りの音がスピーカから出ないのを、アンプやスピーカケーブルなど、他の機器との相性のためと思って次々と機器を取り換えている気の毒な方が沢山おられます。一方何も考えずにシステムを設置したのに、最初から良い音で再生できたと言う非常に幸運な方も僅かですがおられます。

 私は松下電器産業に在職中から部屋の重要性を体験していたので、リスニングルームの研究を個人的にやっていて、新方式の試聴室を考案したりしてましたが、6年前に定年退職してから、これまで定量的に判らなかった、定在波と伝送周波数特性の関係を本格的に研究を始め、最近やっと低音を含めて良い音のリスニングルームを造れるようになりました。

 この研究は、松浦さんとのお付き合いが有ったからできたとも言えますので、松浦さんがホームページで、石井式リスニングルームについての技術情報を提供されることを喜んでいるのです。

 そもそも私と松浦さんとのお付き合いは、私が定年になる頃でしたが、きっかけは松浦さんが使っていたテクニクスのモニタースピーカ「SB-M1」のミッドローレンジのユニットの修理を松下に依頼したができないとの解答をもらったが、なんとかならないだろうかと相談をしてきたのが最初でした。
 そして小生宅に奥さんと見えられて小生宅のSB-M1の音を聴き、自分の部屋より良い音で鳴っていると言って感心され、その違いの原因がオーディオルームの特性にあることを体験したのがリスニングルームに興味を持つ原因になったものと思われます。

 ちょうど小生がオーディオルームの研究を始めたときで、10分の1の模型を作って実験をしながら低域の伝送周波数特性と定在波の関係を研究しているのを見て非常に興味を示していたのを、昨日のように思い出します。
 以後、今回のホームページ作成のきっかけとなる、@nifty/FAVのメンバーの方のリスニングルームについての質問や設計依頼を通して、松浦さんとのお付き合いが始まったのですが、松浦さんの知識欲と勉強振りと世話好きにはいつも感心していました。

 松浦さんの提案で、小生が設計した可変残響式のテクニクスの試聴室を会場にしたセミナーを3回行い、参加された方に喜んで頂きましたが、東京でも是非やって欲しいとのことで、葛飾にあるO氏宅の試聴室でも行い喜ばれました。これらのセミナーに参加された方のリスニングルームを測定したり、FAVのメンバーの方のリスニングルームを測定したりして実際のリスニングルームの特性を知ることができたので、部屋の特性の研究には非常に役にたちました。

 小生が研究を始めたときには、実際の部屋の特性をどうして測定するか心配したのですが、松浦さんを通して知り合った方の部屋の特性を測定するだけで、充分研究材料を手に入れることができましたので、非常に感謝しています。おかげで研究のほうも順調にすすんで、低音の伝送周波数特性に部屋の縦横高さの比率が大きく関係していて、【1.0 : 0.8 : 0.7】のときが最も良いことが分かりました。現在AESに投稿する準備をしていますがこれは今後のリスニングルームの建設に大きく役に立つものと期待しています。

 松浦さんがこの度リスニングルームのホームページを作ることになっ石井伸一郎さん近影たことは、良い音を求めて苦労している方のためにもおおいに役立つものと思います。小生のこれまでに書いたものは少々堅い表現で判り難い点が多かったようですが、松浦さんが自分なりに咀嚼して誰でも理解できるようになればオーディオ愛好家の方には非常に役立つものと思っています。

 これからこのホームページを読んだ方の声を聞きながら本当に役に立つホームページに育てて頂きたいと思います。皆様もご意見ご質問をどしどしされてこのホームページが素晴らしいものになることを応援して頂きたいと思います。

平成12年10月1日
石井伸一郎


石井伸一郎(いしいしんいちろう)さんの略歴

 昭和9年(1934)4月19日福島県福島市生まれ。中学・高校時代は模型やラジオ作りに熱中。
 昭和28年(1953)東北大学工学部、通信工学科に入学。
 昭和32年(1957)松下電器産業株式会社に入社。ラジオ事業部音響工場設計課に配属となり、「8PW1」通称げんこつと呼ばれた20cmダブルコーンスピーカの 開発者の阪本楢次氏の下でHi-Fi用スピーカユニットの開発を担当。
 昭和35年(1960)「モーションフィードバック理論」を日本音響学会に発表、翌年20cmのMFBスピーカを開発し、さらにスピーカシステムとアンプを組合せたMFBシステムを商品化し米国に輸出して好評を得た。このシステムに使用したホーンツイター「5HH17」は単体スピーカとして発売され大ヒット商品となる。
 昭和40年(1965)「テクニクス」ブランドが誕生。その一号機「Technics 1」スピーカを開発。大ヒットする。
 昭和41年(1966)NFアンプの周波数特性の研究を行い、他に先駆けてユニークな回路構成の真空管式OTL・OCLアンプ「Technics20A」を開発、商品化。
 昭和44年(1969)オーディオ事業部に移りオーディオアンプの企画を担当。
 昭和48年(1973)回路理論の研究を行い、その応用としてパラメトリックイコライザの開発を提案。「SH-9090」を商品化した。
 昭和50年(1975)HiFiオーディオ事業部スピーカー開発室室長に就任。帯域内の位相特性を平坦にそろえた世界初の「リニアフェーズ理論」による「Technics7(SB-7000)」を開発、10万台にのぼる販売を記録。
 昭和55年(1980)日本音響学会に、続けて昭和57年(1982)AES(AUDIO ENGINEERING SOCIETY 米国)にて試聴室の壁を吸音と反射の2種を交互に配置する「新しい試聴室の設計法」(現在の石井式リスニングルームの基本)を発表。
 昭和58年(1983)オーディオ事業部技術部長に就任。
 昭和63年(1988)米国のルーカスフィルム社を訪問、そのとき同社のスタジオがAES発表を元にした石井式リスニングルーム方式で設計されている事を知る。
 平成2年(1990)テクニクスとルーカスフィルム共同開発の「ホームTHXシステム」を発売開始。
 平成6年(1994)松下電器産業株式会社を定年退職。現在MML(マルチメディアリビング推進協議会)会長として、リスニングルーム・ホームシアターの普及促進に携わるほか、ライフワークとしてオーディオルームの研究に熱中している。
この研究の一部はMj誌の1997年6月号から1999年4月号まで連載されている。

 

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