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スピーカーは足元が大事

 オーディオではスピーカーに限らず、置き方で音が変わります。足元をしっかりとケアすることで、クォリティにも影響がでる時があります。オーディオシステムのセッティングコラムでこの点を簡単に紹介しただけっでしたので、今回はもう少し深堀していきたいと思います。。

スパイク


スパイク脚の例

 近年のスピーカーの多くでスパイク脚が採用されています。スパイクの利点はがたつきをなくし、床にしっかりと固定できる点です。スパイクをよく「インシュレーター」と表現しているものがありますが、実際は「アンカー」だと思います。スピーカーの重量を4点や3点、など、小さな面積で床に接することで、1点にかかる重量を大きくすることで、より動きにくい状態を作り出しています。

 スピーカーの理想は振動板を正確に動かすことですから、土台となるキャビネットは振動させないというのが理想です。しかし現実は振動板が動くとその反作用でキャビネットは振動してしまいますので、キャビネット自体をできるだけ質量の大きいものに固定させ、振動を最小限に抑えたいところです。この場合、スピーカーが接する場所で一番質量が大きいものは床となります。極論を言えばスピーカーのキャビネットを床にボルトなどでしっかり固定すれば良いのですが、さすがに現実的ではありません。そこで、スパイクの使用が考えられたのだろうと思います。実際にスパイクの接地状態をきちんと調整し、がたつきをなくすことで、再生音の解像感の向上や音像、音場が安定するのを確認できます。

 スパイクを使用する目的は以上のようなものですが、私がご依頼者のシステム調整にお伺いした例では、意外にこのスパイクが適正に調整されていることが少なくありません。以下に私がスピーカーのチューニングの行なう際の手順をまとめました。もし、スパイクの設置状況に懸念がある場合や、長期間調整されていない場合は、ぜひチェックしていただければと思います。
 なお、床はフローリングを想定していますので、床の傷を防ぐためスパイク受けの使用を前提としています。

 1.音楽を再生しながら、スピーカーの設置位置を探す
 2.設置場所がおおむね決まったら、音場表現を確かめながら振り角を決めていく
 3.帯域バランス、定位、音場表現が適正と判断できれば、スパイク調整を行なう
 4.スイートスポット調整を行ない、再度スパイクのガタを点検する
 5.スパイクにガタが出ていなければ完了
 この手順で進めて、もし気になる部分があれば最初からやり直すか、最後のスイートスポットのチェックをやり直します。

 さて、スパイクの調整は各スパイクがほぼ均等に重量を受けている状態かを確認します。スピーカーを軽く左右前後にゆすってみて、がたつきがある場合は確実に調整が必要です。がたつきがほぼ解消されたら、各スパイクに適正な荷重がかかっているかの確認を行います。スピーカーの多くはユニットが付いているフロントバッフル側が重いので、重さで確認するのではなく、スパイク受けを触ってみて荷重ががかかっていることを確認します。もしスパイク受けがわずかに動くようなら荷重が十分ではないので、スパイクを回して、適正な荷重がかかるように調整します。


スピーカー(サブウーファー)のスパイク調整の様子
オーディオシステムセッティングの第5回で紹介した
エアジャッキでスパイクを少し浮かすことで、ねじが回転しやすくなる

 なお、この調整法はスピーカーだけではなく、オーディオラックでも同様ですが、ラックの場合は天板の水平も調整対象になりますので、スパイクの加重調整だけでなく、天板の水平も確認しながら調整することが重要になります。実はスピーカーの水平も確認したいところですが、近年のスピーカーのデザインは水平面が存在しないものも多くありますので、こちらは見た目で判断してもよいと思います。もちろん見た目で極端に傾いている場合は修正します。また、水平面を確認できるスピーカーの場合は、水平もあわせて調整するのが良いと思います。

スパイクのないモデルの場合

 ブックシャルフ型やビンテージスピーカーでは、スパイクはほぼついていません。まず、比較的大型のものでしたら、木製キューブの使用がお勧めです。スピーカーのサイズ、形状に合わせて不安定にならない大きさのキューブを用いて、4点あるいは3点で支えるようにします。4点でフローリングに設置する場合、微妙にガタが出ることがありますが、前回のコラムでAVレシーバーの5本目の脚調整に使用した、クラフトペーパーでスペーサーを作り、スペーサーの枚数を調整しながらガタをなくします。


ブックシャルフなどでスパイクがない場合
ウッドキューブ等でスピーカーを支える
設置時のがたつきをしっかりと解消するのが重要

 比較的小型のブックシェルフでは、スタンドを用いるケースも多いと思います。近年のスピーカースタンドの多くはスパイクがついていますので、上記の方法で紹介した説明に従って調整します。次にスピーカーとスタンドについては、ここでもスパイクを利用してスタンドの天板にする方法があります。この場合、スパイク受けをスタンド天板にごく薄い両面テープで固定すると安定度は増すと思います。スピーカーによってはスタンド天板にベタ置きせず、スパイクなどで底板の振動を妨げないようにした方が、音楽がのびのびとなるモデルもありますので、実際に音楽を鳴らして試しながら設置を検討してください。
 また、そのスピーカーに特化した専用スタンドがある時は、それを使うのが良いと思います。モデルによってはスタンド天板にねじ止めできるものもあり、やはり専用設計の利点があります。

 いずれの場合でも、目的はスピーカーキャビネットを揺れにくい場所にしっかりと接地sることが目的なので、ゴム系などの素材を挟むことはお勧めできません。ただし、固定のためキャビネットの上に重しを乗せたりするのは、キャビネットの振動を抑えすぎる結果になりますのでやめておいた方が良いでしょう。

 次にビンテージスピーカーの場合、いわゆる「ハカマ」がついたモデルがあります。これをフローリング床に設置すると、やはり微妙にガタが出る場合があります。このケースではハカマの下に5o〜10oの厚さのウッドブロックで3点〜4点で支えてやると、スパイク使用と同様の効果が得られます。4点置きでガタが出る場合は、ブックシェルフと同様にスペーサーで調整します。また、直接床に置いて顕著なガタがない場合でも、ウッドブロックを挟むことで、改善することが多くありますのでぜひお試しいただければと思います。


ウッドブロックの例
写真はコクタンで5p×5p角、厚みは左が5o、右が10o
ハカマとフローリングの間に挟みスピーカー設置を安定させる

 ハカマのあるデザインが特徴のタンノイのプレステージシリーズなどで、比較的新しいモデルでは、ハカマの中にスパイクが隠れているものが存在します。この場合もハカマが床についているように見えて、実際の接地はスパイクとした方が良いと思います。ほとんどのユーザーはお気づきだと思いますが、もし見落としがある場合は、ぜひお確かめください。

フローリング以外の床の場合

 ここまでフローリング床を基準に話を進めてきましたが、畳の部屋、マンションなどのクッションフロアなど一般的なフローリングと比べて弾力性のある床が存在します。これらの床に関しては現在のところご提案できるよいセッティング法がありません。畳をめくって板張りの状態にしてしまうといった強者もいらっしゃいましたが、それでも板の強度が問題となり、美観から見ても良いアイデアとは思えません。無理な提案かもしれませんが、できるだけしっかりとしたフローリングのお部屋を利用されることをお勧めします。

 なお、完全な打開策ではありませんが、強度が弱いフローリングやクッションフロアの場合、オーディオボードの使用が考えられます。まず、スピーカー重量が20kgを超えるようなモデルでフローリング床に設置する場合は、オーディオボード無しの方が良いかもしれません。スピーカーが軽量でオーディオボードを使用する場合は、上記の5o〜10o厚のウッドブロックなどで支えるのが良い結果になることが多いと思います。大型ブックシャルフの場合と同様です。この場合は3点受けで十分安定します。ボードを3点で受け、さらにスピーカーのスパイクと、まさに「屋上屋を架す」状態になりますが、過去の経験からもまずはお試しいただければと思います。

床の強化について

 石井式リスニングルームで設計させていただく場合は、この床問題も部屋の響きとともに重要な要素ととらえて設計法を練っています。設計上コンクリート直張りが一番シンプルな方法ですが、住宅の仕様やリフォームの場合はこの手法が使えないケースが多々あります。その場合もオーディオに適した床の強度を向上させるいくつかの手法や、より良い結果を得られるようさらに改良を加えています。この床の改善などでは、構造上の情報など必要になりますが、随時ご相談をお受けしておりますので、お気軽にご連絡いただければと思います。

2025/2/16 HOTEI(松浦正和)

 
 *本稿でご不明な点、ご質問などございましたら「こちら」までご連絡ください。

 スピーカー位置の検討についてのご質問では、お部屋の写真を添付いただけると、イメージがつかめます。その際は正面、後方、左右、天井方向の写真とごく簡単で結構ですので、お部屋の縦横高さの寸法をお送りいただけましたら助かります。

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