AVレシーバーの入替と調整 |
前回のコラムでお知らせしましたが、昨年(2024年)にAVレシーバーをヤマハRX-A2070から、同社のRX-A6Aに入れ替えました。入れ替えの理由はHDMI規格の広帯域化とデジタル音場処理、音質面での向上に触発されてのものでした。私が歴代ヤマハの製品を使い続けているのは、古くはDSP-1という音場プロセッサーがルーツにあります。これは一時期話題になった機能で、通常の2ch再生にディレイマシンなどの音場情報を加えて、リスニングルームの残響を豊かにするといったもので、このDSP-1では実際の有名なホールなどの残響パターンを部屋の前方と後方の高い位置に追加したスピーカーで再現するものでした。メインの2chの音声信号には一切手を加えず、プレゼンス用のスピーカーからのみ残響を加えるといった手法で、一種のギミックではありますが、クラシックなど特定のソースでは部屋の制約を超える再生が可能となります。7年前に私の部屋が石井式リスニングルームとなり、豊かな音場表現ができるようになりましたので、2ch再生では使うことはなくなりましたが、ライブビデオなどでは活躍してくれています。 歴代のYAMAHAのAVレシーバーにはこのDSPの進化版が受け継がれており、他の機能と併せて私が本機を選ぶ理由のひとつになっています。スペックの詳細については、RX-A6Aの紹介ページ(RX-A6Aの紹介)を参照していただくとして、DSP以外にもう1点私が本機を選んだ機能がパラメトリックイコライザーの搭載です。グラフィックイコライザーの場合、調整できる周波数と可変する帯域を示す「Q」は固定されたタイプとなります。これに対して、パラメトリックイコライザーは、調整したい中心周波数が可変で「Q」も可変となっているのが異なる点です。本機導入後の調整で驚いたのは、パラメトリックイコライザーの中心周波数が従来機に比べ圧倒的に細かくなったことです。このことは、紹介ページや取説に記載がなく、実際に使ってみて初めて分かったことで、サラウンドスピーカーの音質調整がより緻密に行なうことができるようになり、私を調整の沼に引き込んでしまい、設置調整をすっ飛ばしてイコライザー調整に夢中になってしまうという、初歩的なミスを誘う原因でした。 AVレシーバー入れ替え それでは、RX-A6Aへの入れ替え時に行なった調整を順を追って紹介します。以前のホームシアターチューニングと重複する部分がありますが、今回の実際に行った手順で新たに気が付いた部分もありますので、お付き合いいただければ幸いです。 私の部屋では、オーディオ再生とヴィジュアル再生時のメインスピーカー、つまりフロントLch、Rchは同じですので、AVレシーバーのプリアウトから、2chのプリアンプ、パワーアンプ、スピーカーという経路でつながっています。こちらは基本的に2chオーディオ用に調整されていますので音量以外の調整の必要はなく、逆にこのメインシステムにヴィジュアルシステムの各チャンネルの音色を合わせていくという作業になります。 スピーカーの設置調整 まずは、AVレシーバーの変更に伴いい、センターおよびすべてのサラウンドスピーカーのスイートスポット調整をやり直します。女性ボーカルや常に広い帯域で多くの楽器が演奏されているソースを用いて、特に中高域でヌケの良い状態になるよう、スピーカーの向きを微調整し、さらにリアサラウンドやサラウンドバック、ハイトサラウンドの各ペアを単独で鳴らしたときに、ヴォーカルなど中央定位の音像がピタリと真ん中に定位するよう調整を行ないます。この調整がうまくいくと、サラウンド再生での空間のつながりなど、音場感の表現がより豊かになり、サラウンドチャンネル間での音像定位も明確になります。実際、レシーバーの変更でスイートスポットは以前の状態からわずかながらに変化していました。
各スピーカーのスイートスポット調整を行なったのち、イコライザーを使って音色調整作業を行ないますが、私は調整の経過を確かめながら進めたいので、すべて手動で聴感を頼りに手順を進めていますが、もちろんレシーバーの自動調整機能を使って調整を行い、その結果を基準に微調整を進める方が手順としては効率的だと思います。 センタースピーカーのイコライジング 次に、センタースピーカーの音色調整を行ないます。私のシステムでは、センタースピーカーと2chのメインシステムは同一モデルですが、L.Rのスピーカーは通常のステレオ再生のセッティングで音色は揃えていますが、センターはあまりに位置が違いすぎて、音色バランスを揃えるにはイコライザーを使うことになります。
まずは、フロントL、C、R以外のスピーカーから音が出ないようにして、2ch再生したときとAVレシーバーのヴァーチャルセンターchの機能を使って、L、C、Rの3つのチャンネルで鳴らしたときの違いを最小限にするよう、センターチャンネルのイコライザーを調整していきます。センター定位のヴォーカルソースを使い、センターあり、センターなしでの違いを埋めていくといった作業になります。 サラウンドチャンネルのイコライジング センターの調整の次に、各サラウンドチャンネルの調整を行ないます。サラウンドの各スピーカーは基本的に左右ペアになっていますから、フロントL,Rの2チャンネル再生と音色が合うように調整していきます。調整はサラウンドのペア、サラウンドバックのペア(シングルの場合は単独で)、ハイトチャンネルのペアとそれぞれのペアごとに調整を行ないます。基準はフロントL、Rのステレオ再生です。低音から高音まで常に多くの楽器がなっているソースを用いるのが分かりやすいと思います。 なお、各サラウンドスピーカーの低域クロスオーバーが設定されている場合、サブウーファーが鳴る設定か、鳴らない設定の両方で確認して作業を行ないます。あくまでフロント左右chが基準ですので、サブウーファーのあるなしで音色の感じ方が変わるので、注意するポイントになります。 例えば、スピーカー構成で多くの場合サラウンドスピーカーを「小」に設定して、サブウーファーのクロスオーバ設定しますが、一時的に「大」に設定することで、サブウーファーを鳴らさない設定にできます。調整後設定を{小」に戻して、サブウーファーのクロスオーバー周波数を設定します。 このように各チャンネルをペアごとに調整していきますが、各ペアごとのイコライザー値は左右で揃えるようにします。最初の段階でスイートスポット調整をしていますので、結果的に左右のイコライザー値はそろえておく方が、本来のサラウンド再生時に違和感なく再生できるようになります。。
イコライザー調整の重要な要素として、音色を完全に合わせるのではなく、あくまでバランスを近づけることを目的とするのが良いと思います。私の例では、オーディオメインスピーカーはわずかにドンシャリ傾向なのですが、これはあくまで私の音楽鑑賞時の好みで、結果的にこれが基準となります。しかし、サラウンドスピーカーをこのドンシャリに近づけすぎると、ドンシャリ傾向が相乗された状態となりちょっと困った状態になります。そこで、最終調整として、サラウンド各チャンネルを微調整してサラウンド再生時のバランスを整えていきます。 音量バランス、距離の調整 各チャンネルの音量バランスはイコライザー調整を行なうたびに補正をしています。AVレシーバーのテストとトーンを用いての調整になりますが、いろいろなサラウンドソースで気になるものがあれば、複数のソースで整合性をとっていくというのも間違いありません。 各スピーカーのc距離調整は、最初の段階で計測した数値から始めています。音色調整が進んだとところで、実測値より少し距離を短めに設定する方法を、以前のコラムで紹介しました。フロントL、C、Rは実測値ですが、それ以外のサラウンドチャンネルは距離を短めに設定しています。距離を短くすることで発音タイミングを少し遅らせ音場の広がり感を調整しています。 現実の部屋ではサラウンドチャンネルの音と部屋の残響が混ざった状態となり、発音タイミングによっては定位が少しあいまいになる場合があります。そこで、距離調整により発音タイミングを部屋とスピーカー設置の状況に合わせ、入念に調整していくことで包囲感や音場のつながりを確保しつつ、自然な定位が感じられるように調整していきます。実際に今回の調整によりサラウンドチャンネル、特にハイトスピーカーによる上方定位のセパレーションは確実に改善された感があります。これは、イコライザーで細かい音質調整を行なったことによりはっきりと感じ取れる結果となりました。 作業後のチェック 調整の最後は、ブルーレイデイスクやサブスク配信などのいろいろなサラウンド音源ででの確認作業になります。DolbyATMOSやDTS-X作品だけでなく、5.1chや2ch作品なども合わせて確認を行い、いずれのタイトルでも違和感なく再生できることを確認できれば、作業は一段落です。作品ごとにマスタリングの微妙な差があることは事実ですが、調整を追い込むことで、その差が埋まってくるのもの事実ですので、根気良く挑戦していただければと思います。 オーディオシステム、サラウンドシステムの調整など、ご相談承っています。メール等でお応えできる内容でしたら無償で対応しています。また、直接お伺いしての調整などはど有償とさせていただいております。ご連絡は下記メールアドレスからお願いいたします。 2025/1/28 HOTEI(松浦 正和) |
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*本稿でご不明な点、ご質問などございましたら「こちら」までご連絡ください。 スピーカー位置の検討についてのご質問では、お部屋の写真を添付いただけると、イメージがつかめます。その際は正面、後方、左右、天井方向の写真とごく簡単で結構ですので、お部屋の縦横高さの寸法をお送りいただけましたら助かります。 |