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ホームシアターのサウンドチューニング第7回 AVアンプ設定 #2

 AVアンプ、ファインチューニングの続きです。前回まででスピーカー設置直後あるいは、それに自動調整を実行後の状態から、各スピーカーの音量とリスニングポイントからの距離をさらに微調整しました。ここからAVアンプ搭載のイコライザーを使用して、各スピーカーの音色バランスを整えていきます。AVアンプの自動調整でイコライジングまで調整してくれますが、少し前のモデルではイコライジングまでは調整しないものも存在します。また、自動調整でも部屋の状況や、お好みにより微調整が必要となるケースもあります。映像作品のサウンドミックスは作品により、微妙に音量バランスなどが異なって聞こえる場合がありますが、ファインチューニングを行うことで、作品ごとの差異や微妙な違和感を、ほとんど気にならないレベルまで落とし込むことができます。

イコライザー

 AVアンプに搭載されるイコライザーには、グラフィックイコライザータイプとパラメトリックイコライザータイプの二種に分けられます。近年のアンプの多くはパラメトリックタイプが搭載されているようです。

 グラフィックイコライザーの場合は、調整周波数が固定され調整したい帯域のレベルを増減させることで音色調整を行います。調整の細かさはバンド(周波数)数で決まり、バンド数が多いほど細かい調整が可能になります。

 パラメトリックイコライザーの場合は、調整周波数を可変することができ、さらに選んだ周波数を中心に帯域の幅を広げたり、縮小したりできます。まず調整したい帯域の中心周波数を選び、さらに「Q」の数値の設定で、中心周波数からどのくらいの範囲を調整域に対応させるかを選びます。「Q」の数値が小さいほど調整域が広くなり、数値が大きくあるほど、調整域が小さくなります。使い方には少し慣れが必要になりますが、慣れてくると、かなり自在にコントロールすることができます。

 このサイトでは、オーディオを中心として扱っていますので、フロントLch、RCHはすでに入念に調整されいるという前提で進めています。したがって、フロントLch、RCHはフラットの状態で使用し、その音色に各スピーカーを合わせていくという手法で進めさせていただきます。

センタースピーカー

 調整はまずセンタースピーカーから行います。AVアンプには2chソースを疑似サラウンドに変換するプログラムが含まれていると思います。2chネイティブで鳴らすと、Lch、Rchのスピーカーだけで再生され、疑似サラウンドを使用すると、中央音像はセンタースピーカーから再生されます。これを利用してセンタースピーカーの音色を左右chスピーカーに合わせていきます。音源はセンター定位が明確なボーカルやニュースのナレーションの利用がわかりやすいです。この時の「声」の感じが、2chと疑似サラウンド再生でほぼ同じになるようにイコライザーで調整します。左右スピーカーと同じ系統のスピーカーであれば、おおむね1kHz以下の中低域の調整で十分効果が出ると思います。これは同系統のスピーカーであっても、部屋とスピーカーの関係、つまりスピーカーを置いた場所で伝送特性が異ってしまいます。左右スピーカーは左右均等に置けるので丁寧に位置調整を行うことで、伝送特性の差をほぼ気にしなくてよい状態にできますが、センタースピーカーは中央にあるため、左右チャンネルに比べ、中低域で伝送バランスに変化が現れます。これをイコライジングで、できるだけ同じ印象になるよう調整を行います。なお、センタースピーカーに小型スピーカーを用いる場合は、低域をサブウーファーに受け持たせます。この際、低域のカットオフの設定を行いますが、これについては後述のサラウンドスピーカーの調整をご参照ください。

 ボーカルやナレーションでの調整を進めた後は、音楽ソフトで2chと疑似サラウンドを切り替えながら、特に低音楽器の再生に違いが無いかをチェックします。もし、違いがあるようなら、気になる帯域に調整を加えます。最初はどの周波数が音色に影響しているのか手探りになるかもしれませんが、じっくりと取り組んでいただければ、少しずつ感触がわかってくると思いますので、地道な作業になりますが、時間をかけて取り組んでいただければと思います。

サラウンド、ハイトスピーカー

 サラウンドスピーカーの調整も基本はセンタースピーカーと同じですが、調整時はサラウンドLR、ハイトLRと各ペアごとに2チャンネル再生を行い、フロントLRと音色合わせを行います。また、サラウンドスピーカーなど、壁付けの場合小型スピーカーを使用していることも多いと思いますので、低域をサブウーファーに受け持たせるため、低域のカットオフ設定などもバランスを聴きながら調整を行います。もちろん、調整時にはAVアンプの設定でサラウンド+サブウーファーが動作するモードを選択します。

 このモードについては、AV アンプごとに設定法が異なりますので、すべて以下の手法で設定できるかはわかりませんが、設定例をお知らせします。

〇2チャンネルソースを再生する

〇すべてのチャンネルで2チャンネル再生になるモードを選ぶ
 *この時センタースピーカーは鳴りません。もし、鳴る場合はスピーカーケーブルを一時的に外します。

〇調整を行うサラウンドLR以外のスピーカーが鳴らないよう、スピーカーケーブルを外す。あるいは止めたいスピーカーのパワーアンプをオフにする

〇目的のチャンネル以外の設定を、AVアンプ側で「スピーカー大」に設定しておくことで、他チャンネルのサブウーファーへの信号を止めることができます。

〇サブウーファーが動作しているかを確認する

 以上の手順で、目的のペアのみの音色を確認しながらの調整ができます。なお、この手順で素早く各スピーカーごとの接続ができるよう、AVアンプのスピーカーターミナルは、バナナプラグでの接続にしておくと、作業が早くできます。

 調整手順をすべて手動で行っている場合は、各帯域のレベルを少し大胆に動かして、少しずつイメージに近づくよう細かく調整していけばよいでしょう。自動調整でイコライザーが調整できている場合で、もしフロントチャンネルと違和感があるようなら、さらに手動モードで調整を加えます。なお、自動調整では、各ペアのイコライザー数値が左右で異なっている場合があるかもしれません。その場合は、違和感の少ないほうのチャンネルに他方のチャンネルのイコライザーパターンと同じにするのも良いでしょう。手動調整では基本的に左右のパターンは同じになるよう合わせていきます。

 調整用のソースはここまで2チャンネルの音楽ソースを用いますが、ある程度まとまってきたら、ソースの幅を広げ、女性ボーカル、男性ボーカル、楽器が多く帯域の広いソースなどでチェックして帯域バランスの確認を行い、そこで違和感のある場合は、さらに細かな調整を行います。また、ソース選びではAVアンプに備わったテストトーンなどを再生しての音色チェックも利用できます。ただし、テストトーンは各スピーカーごとの音色チェックができますが、サラウンドチャンネルでは、サブウーファーが鳴らない設定になりますので、その点は注意が必要です。

 上記のほか、テストソースとして利用できるものに、ドルビー・ラボが頒布しているデモディスクがあります。このディスクに収録されているレベルチェック信号は、Dolby ATMOSでエンコードされていますので、サラウンドチャンネルなどサブウーファーを加えた状態でのチェックができます。また、私の環境ではスピーカー構成が「5.1.4」ですが、テスト時は「9.1.6」のトラックを用いることで、スピーカーの無いチャンネルがどのように聞こえるかのチェックもできます。

 少し困った点は、このデモディスクが非売品で、一般的には入手困難です。収録されているいくつかのデモ動画はネット検索で見つかると思いますので、「Dolby Atmos Trailer」で検索していただければ、Dolbyラボオフィシャルページ以外でも見つかると思います。ただ、上記に紹介したレベル調整用のトラックは残念ながら見つかりませんでした。市販ソースでもテストディスクを探してみましたが、残念ながら現時点では見つけることができませんでした。


Dolby ATMOS デモディスク(参考)
Dolby ATMOSエンコードされたレベルチェックトラックが重宝します
現在ほとんど入手はできないのが残念

イコライザー調整のポイント

 イコライザーで各スピーカーの音色、帯域バランスを合わせていきますが、スンぴーかーそのものが異なるために、完全に合わせることは少し無理があります。したがって、いくつかのATMOS作品で、自然なサラウンド感が得られるよう調整するのがコツです。チェックを行う際、音像が大きく動くシーンなどで確認することも大事ですが、静かなシーンでの環境音、部屋の中、屋外、森の中などの包囲感や自然な空気の揺らぎ感などの表現もチェック対象になります。また、映像作品によってサラウンドレベルを強調したものや、控えめなものがありますが、その違いが顕著に出る場合は、まだもう一歩調整の必要がありそうです。シアタールームの環境などによっても変わりますが、多くの作品でレベル調整を気にしなくてよい状態を作り出すこと、全体のバランスを調和させるという意識を持つことが、調整のコツといえそうです。
 なお、イコライザー調整を行ったあとは、必ず各チャンネルの音量レベルの再調整を忘れないでください。

2023/6/1 HOTEI(松浦正和)

 
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