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ホームシアターのサウンドチューニング第5回 スピーカー設置

 今回はサラウンドを含めたスピーカー配置について進めていきます。このサイトではオーディオリスニングと、シアターの両立を基本に進めていきますが、オーディオ用として使用しているスピーカーを、シアターのフロントスピーカーとして使用することを前提に説明をさせていただきます。もちろん、オーディオ、シアターとスピーカーを分けて使用する場合も、基本は同じです。

スピーカーの配置

 サラウンドの基本配置でよく見るのは、リスナーを中心とした円を描き、その円周上に各スピーカーを配置するといったものですが、残念ながら実際に部屋を使うとなると、この配置はかなり無理があることがわかります。また、部屋の音響特性から見ると、部屋の中央付近にリスニングポイントが来るという、非常に難しい設定になり、音響的には現実的ではない配置となります。もちろん、映画館のようにかなり広く、低域定在波との相関性をそれほど考慮しなくてよい部屋のサイズなら良いのですが、ホームシアターの部屋のサイズを想定すると、決してベストとは言えません。

 このコラムの第1回で部屋とスピーカーの関係について紹介しましたが、伝送特性を考慮して、天井の高さを確保できればよいのですが、一般的な部屋のポロポーションで、スピーカーを配置する場合は、部屋の長辺側にスピーカーを配置するのが音響的に有利になる場合が多くなります。特に12畳サイズの場合は圧倒的に長辺セッティングが音響的に有利になりますので、この方法で配置を考えてみます。一般的なサイズで、唯一6畳サイズのお部屋なら短辺セッティングでも音響的な不利は非常に少なくなります。

サラウンドでのスピーカーセッティング

 メインとなるフロント左右のスピーカーのセッティングについては、オーディオセッティングのページを参考にしていただければ、オーディオ、シアターともに同様のセッティングで問題ありません。サラウンド再生の場合は、各スピーカーの音のつながりが重要になりますので、オーディオ再生に違和感のない程度に内ぶりを強めにしていただけると、壁の反射を利用して音の広がり感が得られるのでお勧めです。上記の通り、オーディオセッティングのページを参考に入念に調整していただければと思います。

 長辺セッティングの場合、リスニングポイントはかなり後ろの壁に近くなりますので、サラウンドスピーカーは後壁のコーナー近くに設置することになりますが、これも角度調整などで、十分に後方の音像を得ることが可能です。サラウンドバックについては、残念ながらこの手法では配置が難しくなりますので、この点はAVアンプのヴァーチャルサラウンドバックを使う方法を検討するのも良いと思われます。サラウンドスピーカーの調整を入念に行うことで後方音像の実態感も十分に感じられるようになります。

センタースピーカー

 センタースピーカーはディスプレイやスクリーンの邪魔にならないよう、背の低いセンター用スピーカーを用いる方法が一般的です。フロントメインスピーカーと同系列のモデルを使うことで、スピーカーの個性を統一することができます。セッティング位置はメインスピーカーの中央に置きますが、オーディオのところで説明しましたように、メインスピーカー同様に入念な位置調整を行うことで、自然な音場のつながりを得ることができます。フォーカス調整の結果センターからわずかにずれる可能性もありますが、映像や音場のつながりに問題にない程度なら、フォーカスチューニングを優先した方が良いでしょう。

 特殊な例としては、メインスピーカーと同じモデルをセンタースピーカーに使用する手法もあります。この場合、スピーカーはスクリーン背後に置くため、音を透過するサウンドスクリーンの使用が前提となります。ホームシアターでは、この音の透過性能が音質にかなり影響するため、できれば「穴あき」タイプより、生地タイプを選ぶのが一番です。

 サウンドスクリーンの例はこちらをご覧ください。


スクリーン背後にセンタースピーカーを配置した例

ハイトスピーカー

 イマーシブルサウンドではハイトチャンネルを設定することで、従来の水平方向に加え、垂直方向の音場再現を可能にしました。スピーカーは天井あるいは天井近くに設置することになります。これから部屋を構築する場合は、あらかじめ天井にスピーカーを設置することも可能ですが、現在お使いの部屋に天井配置することは難しくなります。そこで、左右の壁の天井近くにスピーカーを設置して、ハイトスピーカーとすることも可能です。実際、石井式を設計する場合は、ハイトスピーカーを左右の壁天井近くに設置する方法を採っています。ハイトチャンネルも左右チャンネルに分かれていること、それにより広い音場を形成しやすいこと、比較的メンテナンスが容易になることなどの理由により、設計時に相談しながら設定しています。

 ハイトチェンネルはAVアンプによって異なりますが、上級機などでは6チャンネルまで設置可能な機種があります。部屋を基準に考えると、12畳サイズの部屋まででしたら4チャンネル、それより広い部屋であれば6チャンネル使用も視野に入ります。設置位置はフロントハイトがフロントスピーカーと同列か少しリスニングポジション寄りに。リアハイトはサラウンドスピーカーと同列か、少しフロント寄りに。ミッドハイトはその中間といった感じです。ただし、部屋の状況によって位置関係は変わる、あるいは変えざるを得ない場合が考えられますので、これはごく一般的な基準としてとらえていただけると良いと思います。様々な情報の中には「ハイトスピーカーはこの角度で設置すべき」などといった例もありますが、部屋の研究を行ってきた観点から考えると、そういった基準がすべての部屋に当てはまることはありません。その部屋ごとの特性があり、その特性の中で考慮すべきだと考えます。部屋の条件、使い勝手その他様々なパラメーターがありますので、ぜひ皆様のお部屋でご検討いただければと思います。


フロント、サラウンド、ハイトスピーカーの前後関係の例
サラウンドスピーカーの高さはフロントスピーカーに合わせるか、
わずかに高い位置に設定するのが良い
ハイトスピーカーのフロント、リアの前後間隔は少し広めに設置する


ハイトスピーカー3ペアの場合の設定例
上記同様、前後間隔を広げ部屋の広さを十分に活かす位置が良い

イネーブルドスピーカー

 部屋によってはハイトスピーカーの設置が困難な場合もあるでしょう、その際には天井の反射を利用して、ハイトチャンネルを設定する、イネーブルドスピーカーを利用する方法があります。ただ、天井に反射させて使用しますので、天井の材質などにより音質に影響が出てしまうのは難点です。また、設置方法としてはフロントスピーカーの上面に置くなどの使用例を見ますが、すべてのスピーカーの天板が平面とは限りませんので、設置場所の工夫が必要になります。条件としては、ほぼ左右対称で平面が確保できる場所であること、左右間隔を広めにとれる場所があると良いでしょう。また、必ずしもフロントスピーカーと位置を揃える必要はなく、前後左右でバランスよくおける場所を見つけていただければと思います。イネーブルドスピーカーはユニットに角度がつけられていますので、リスニングポイントでチェックしながら内ぶり角度を調整しましょう。

サラウンドスピーカーのフォーカスチューニング

 サラウンドスピーカーの壁などへの取り付けが完了したら、フォーカス調整を行います。この作業は壁などにブラケットを利用してスピーカーを取り付けた場合を想定して、説明させていただきます。スピーカーブラケットの多くは、スピーカーの向きを調整できるタイプが多いと思います。種類によっては水平方向、垂直方のみの調整となる場合がありますが、部屋の状況などに合わせたスピーカーの向きを考慮して、垂直または水平調整できる方向でのブラケットの取り付けを決めましょう。

 調整方法は、サラウンド、ハイトスピーカーなど左右一対(ペア)になっていますので、各ペアごとに通常の2チャンネルステレオを再生しながら調整を行います。サラウンドスピーカーで調整方法を紹介しますが、以後のハイトスピーカーの調整も同じです。

 AVアンプの設定でサラウンドスピーカーで通常の2チャンネルステレオ再生ができるように設定します。アンプによっては全チャンネルステレオ再生ができる設定などがあると思いますので、状況に合わせてシステム側の設定を行ってください。調整中に鳴らすのは、調整を行うサラウンドスピーカーのみで、他のスピーカーからは音が出ないようにします。

 2チャンネルで音楽再生を行い、リスニングポイントでチェックしながら、音が程よく広がる角度に調整します。スピーカーの音軸が必ずしもリスナーに向く必要はなく、逆に少し角度を持たせ、壁の反射を少し利用するくらいの角度に設定した方が良い場合が多くなります。大体の角度が決まれば、次にフォーカス調整を行います。スピーカーの音の伸び、特に広域などがストレスなく、きれいに表現できる位置を探します。これらをチェックしながら良い位置が決まったら、最終的にリスニングポイントで、ヴォーカル音源などを使って中央定位がぴたりと表現されているかを確認します。ここは非常に重要なポイントですので、じっくりと取り組んでください。最後にブラケットの角度調整を固定して完了です。


サラウンドスピーカーブラケット設置の例
このブラケットの場合は、水平方向のみの調整が可能なため
水平方向でフォーカスを調整している。
音軸はリスナーの少し前で交差しているが、音像は横から背後に定位するよう調整している

 続けてサラウンドバックやハイトスピーカーの調整も同様に行います。アンプの設定などで、調整するペアのみが鳴っている状態にします。ハイトスピーカーの調整は、脚立などの上での作業になり、また調整のため何度も上がったり下りたりするので、大変ですが注意しながら作業を行いましょう。

 以上でハードウエア的な設置作業が終わりますが、この作業が後のAVアンプの設定作業に非常に関わり、音場の自然なつながりや、音の移動感、空間の広がり感など様々な表現につながる重要な部分ですので、入念に行いましょう。

2023/5/1 HOTEI(松浦正和)

 
 *本稿でご不明な点、ご質問などございましたら「こちら」までご連絡ください。

 スピーカー位置の検討についてのご質問では、お部屋の写真を添付いただけると、イメージがつかめます。その際は正面、後方、左右、天井方向の写真とごく簡単で結構ですので、お部屋の縦横高さの寸法をお送りいただけましたら助かります。

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