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ホームシアターのサウンドチューニング第3回 映像フォーマット

 前回は音声系統の接続についてお話してきましたが、今回は映像系の接続について基礎的な部分について進めていきたいと思います。映像の伝送がデジタルになったおかげで現在はHDMIケーブル一本で、映像および音声の接続が可能になりました。アナログ時代の最低でも3本のケーブルが必要だったころと比べ、AVアンプのリアパネルがケーブルだらけになることもなく、また接続作業もシンプルになりました。HDMI黎明期には接続機器やケーブルの相性問題などもありましたが、現在ではそういった現象はほとんどなくなり、民生用映像機器のほぼすべてがHDMI伝送に対応しています。

 さて、HDMIですが、HD(2K・現在の地上波放送など)から4Kへと高精細化するにつれ、その規格も変遷しています。現在のホームシアター環境を考慮して、4K視聴を前提にお話をしていきます。タイトル通りサウンドチューニングについてのページですが、システム構築などに関連しますので、映像規格についても触れておく必要があり、あくまで基礎知識としての内容になっていますので、少しお付き合いください。

映像フォーマットについて

 すでに多くの方が4KでBS4K放送やBlu-rayディスクで、4K映像を楽しまれていると思いますが、これからシアターをと考えておられる方々のために、簡単に基本だけおさらいしておきましょう。4K映像を見るには、チューナー、プレーヤーからディスプレイすべての機器を4K対応製品で構成する必要があります。もちろん、AVアンプもその例外ではありません。
 また、4Kコンテンツにはいくつかの規格があり、機器側もその規格に対応している必要があります。

〇HD:ハイ・ディメンション

 解像度は1980×1080で、現在一般的に普及しているフォーマットです。地上波やBS放送、通常Blu-rayディスクで用いられ、デジタル・ハイビジョンや2Kと呼ばれることもあります。なお、現在の地上波デジタルおよび一部を除くBS放送では送信解像度は1440×1080となっており、受信時に補完を行い1980×1080の画素数で表現されます。また、32インチまでのテレビのいくつかは、解像度を1366×768とした製品もあり、こちらをハイビジョン、1980×1080をフルハイビジョンと区別して呼ぶ場合もあります。

〇4K(UHD):4K UHDはウルトラ・ハイ・ディメンション

 HDの1980×1080の解像度に対し、3860×2160と4倍の画素数で高精細な画像を表現します。色情報はHDの8bitに対して、最大10bitまで拡張でき、より繊細な色表現を可能としています。コンテンツは4K UHD Blu-rayディスク、BS4K放送のほか、ネット配信などでも提供されています。

〇HDR:ハイ・ダイナミック・レンジ

 映像の輝度表現つまり、画像の明るい部分、暗い部分のレンジ幅を拡大した規格です。これによりよりリアルな明暗の表現が可能とされています。現在この規格の最大輝度を満たした民生機はほとんどありませんが、その分、ディスプレイメーカーのチューニングでいかにきれいな画像を表現するか、腕の見せ所になっているように思います。また、映像制作側も、民生用ディスプレイでの再生を意図して調整されているようで、コンテンツにより微妙にキャリブレーションの違いがあるように感じます。
このHDRと区別するため、従来の輝度規格をSDR(スタンダード・ダイナミック・レンジ)と呼びます。また、スチールカメラのHDRとは規格が異なるため、区別するために動画規格ではHDR10と呼ぶ場合もあります。また、4KコンテンツすべてがHDRというわけではありません。

〇HLG:ハイ・ログ・ガンマ

 放送用のHDR規格。輝度レンジの設定に違いがありますが、多くの民生用4Kテレビは基本的にHLG対応済みですので、視聴者側ではほぼ意識する必要はありません。なお、まれにBlu-rayディスクでHLGで収録されたタイトルがあるようです。

〇HDR10+:エイチ・ディ・アール・テン・プラス

 HDRの拡張規格です。HDR作品では映像信号の中に輝度情報などメタ情報として埋め込んで伝送しますが、HDR10+では、輝度情報をシーンごとに設定することで、より繊細なコントラスト表現が可能となります。これを正しく再生するには、送り出しからディスプレイまで対応機が必要になります。また、通常のHDRとは下位互換で、非対応機では通常のHDRとして再生されます。


詳しくは HDR10+公式サイトへ(英語ページ)

〇Dolby Vision:ドルビー・ビジョン

 ドルビーラボラトリーズが独自に開発したHDR規格です。映画館での使用を基本にしていますが、民生用の設定もあり、一部のテレビ、Blu-rayプレーヤーなどで対応機が発売されています。プロジェクターに関しては、国内製品を見る限り2023年3月時点で対応品はまだ存在しません。色数は最大12bitで、輝度情報をシーンごと、フレームごとに設定できるなど、より繊細な映像表現を目指した規格となっています。HDR下位互換で、非対応機の場合はHDRとして再生されます。また、対応機をお持ちの場合はBlu-rayディスクやネット配信で対応作品を鑑賞できます。


詳しくは ドルビー・ビジョン公式サイトへ

〇8K

4Kをさらに高解像度化させ7680×4320の画素数で表現します。HDの16倍、4Kの4倍高精細な映像表現が可能となります。2023年現在民生用での8Kコンテンツは少なく、NHK BS8K放送が主なソースといえそうです。

スペック上の覚えておきたい用語

 以下の用語は、映像フォーマットではありませんが、機器やHDMIケーブルを選ぶ際のスペックを読み解く際に必要となる用語です。現在発売されている最新機器のほとんどは、伝送上の最上位スペックを満たしている場合が多いので、特に気にする必要はないかもしれませんが、知識として頭の隅に入れておいていただければと思い、ごく簡単にご紹介します。

リフレッシュレート

 1秒間に表示されるコマ数を表し、fps(フレーム・パーミニッツ)という単位で表記されることもあります。テレビ放送ではビデオ規格の1秒60コマ表示が多く、Blu-rayなどの映画作品ではフィルム規格の24コマで表示される場合が多く見られます。コマ数が多くなれば当然情報量に差がうまれ、24コマより60コマの方が多くの情報量、伝送ではより広い帯域幅を必要とします。これは、機器はもちろんHDMIケーブルの選定にも関わってきます。また、特殊な例として一部のゲーム機で4K120fpsといったフォーマットも存在し、より広い帯域での伝送が必要になります。

インターレースとプログレッシブ

 ディスプレイの表示は走査線を画面の左から右、上から下に描くことにより画面を映し出しています。インターレース方式はこの走査線を、奇数列で1フレーム、偶数列で次のフレームと走査することで、情報量を抑えることができます。プログレッシブは順次走査で1フレームを走査線を間引くことなく、すべて走査する方式で、情報量は多くなりますが、より良い画質を得ることができます。現在は私たちが視聴している映像コンテンツのほとんどはプログレッシブで表示されており、特に気にする必要はないともいますが、伝送規格のスペックに「60i」や「60p」と表記されている場合がありますが、この末尾の「i」がインターレース、「p」がプログレッシブを表しています。

クロマサブサンプリング

 画像の記録および伝送時のフォーマットです。光の三原色では赤、青、緑のRGBで表現されますが、映像作品の多くは記録や伝送時には輝度(Y)色相(CrCb)で表現された値を使用しています。この画像信号を1コマずつすべて伝送する場合、情報量が多くなり、伝送帯域幅も広くする必要があります。そこでクロマサブサンプリングという手法で情報量を間引くことで、帯域幅の狭い場合でも伝送できるよう工夫がされています。
 機器のスペックなどで「YCrCb(4:4:4)」などの表記を見たことがあると思いますが、4:4:4の場合はフルスペック、4:2:2は横方向の色相信号を間引き、4:2:0はさらに縦方向の色相信号を間引いて表示しています。これは隣り合った画素が同じか近い色となる画像特有の傾向を利用して情報量を抑え伝送帯域を抑えることができる手法です。


 主な映像規格などごく簡単に紹介しました。このように映像信号には様々なフォーマットが存在し、それを最大限に活かすには、再生側でそれぞれの規格に対応した製品が必要になりますが、基本的に下位互換が確保されていますので、上位フォーマットをダウンコンバートにより鑑賞可能となっています。また、接続するHDMIケーブルもフォーマットに合わせ選択する必要がありますので、今後の記事で紹介していきたいと思います。

2023/4/1 HOTEI(松浦正和)

 
 *本稿でご不明な点、ご質問などございましたら「こちら」までご連絡ください。

 スピーカー位置の検討についてのご質問では、お部屋の写真を添付いただけると、イメージがつかめます。その際は正面、後方、左右、天井方向の写真とごく簡単で結構ですので、お部屋の縦横高さの寸法をお送りいただけましたら助かります。

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