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ハイレゾ(High Resolution Audio)

 ハイレゾに関しては、すでに再生環境を整えていらっしゃる方も多いでしょう。つい数年前まではSACDがハイレゾソースの主なメディアといえましたが、音楽ファイルのダウンロード販売や、最近ではストリーミング配信にハイレゾタイトルが増えてきたことは、オーディオファンのみならず、音楽ファンにとってうれしい状況となってきました。そこで、今回はハイレゾについて考えてみたいと思います。

 SACDが発売されたのは1999年5月、デジタルメディアの中心であったCDに対し、広帯域、ダイナミックレンジの拡大により音質向上を狙ったメディアの登場でした。ハイレゾの定義は日本オーディオ協会によると、CDの44.1kHz/16bitやDVDで用いられる48kHz/16bitを超えるフォーマットを指しています。現在私たちが入手できるハイレゾフォーマットの多くは96kHz/24bit(リニアPCM)あるいはSACDの2.8224MHz/1bit(DSD)で、現在ではさらにサンプリング周波数、ビットレートを拡大したフォーマットや、CDと互換性を持たせたMQA方式があり、いずれも再生には方式に対応したデジタル機器が必要になります。

ハイレゾのメリット

 ハイレゾのメリットはやはり自然な音質が楽しめる点でしょう。特に収録時からハイレゾで録音、マスタリングされた作品は非常に良い感触のものが多いです。周波数レンジ、ダイナミックレンジの拡大は録音時やマスタリング作業での制約を小さくする方向に働きます。ネット上のハイレゾ解説では、人間の持つ聴覚能力を中心に説明されていることが多く感じますが、楽器のダイナミックレンジについて触れられることは少ないように感じます。特にポップスやジャズの録音では、オンマイクセッティングで収録されるケースが多く、とりわけピアノやドラムのダイナミックレンジは広大で、録音のレベル設定が難しい楽器だと言われます。特に音の立ち上がり時の瞬間的なピークレベルはかなり大きく、これを歪ませることなく録音するため、平均レベルを下げると全体の録音レベルが下がってしまい、音楽のダイナミズムが表現しにくくなります。また、この立ち上がり時のピークには高調波がかなり多く含まれ、その再現性には周波数レンジがより広いことが求められます。ハイレゾはこれらの点に対して、より大きなレンジを備えることで、より良い音質、音楽表現を目指すことが可能となります。

ハイレオ再生について

 上記では録音現場でのハイレゾの有意点を考えてみました。しかし、家庭内でのオーディオ再生に録音現場そのもののダイナミックレンジを持ち込めません。一般的な部屋で楽曲にもよりますが、平均レベル85dBくらいが普通で、平均が92dBを超えるならかなり大きめの再生になると思います。曲が一番盛り上がった部分で100dBを超えるか超えないかくらいが最大音量となるでしょう。逆に小さい音の方では、一般的に暗騒音は35dB〜40dB程度ありますので、楽音として成り立つことを考えると最低でも平均40dB以上ないと楽音として成り立ちそうにありません。つまり家庭内でのオーディオ再生を考えると下が40dB、上が100dBくらいで、その差は60dBくらいではないかと推測できます(石井式リスニングルームならさらに再生ダイナミックレンジは広がりますが・・・、ちょっとPRです)。もちろん、ここでいう60dBは、楽音が存在している部分のことで、無音部分でのノイズレベルははるかにその下である必要があります。

 このように録音や演奏現場の音量をそのまま家庭内再生に持ち込むことはできません。そこで、家庭内で再生するソフトには少しばかりの工夫を施す必要があります。小さな音は少し持ち上げ、最大音量を少し下げるなど、圧縮操作が必要になります。もし、最大音量にターゲットを絞れば、小さな音は楽音として厳しくなり、最小音量に合わせると、最大音量は爆音になります。したがって、平均的な音量を保ちつつ、音楽として成立させるための工夫が必要です。また、録音のお話で説明したように、楽器によっては発音時にスパイク状のピークが出現しますが、それをおさえる工夫も必要になります。これらの音量をコントロールする目的でリミッターやコンプレッサーなどのエフェクトを使用したり、単純にフェーダー操作が行われます。

 平均再生レベルを確保しつつ、ピークレベルを制御するには、ヘッドルームつまりダイナミックレンジが広いことに越したことはありません。最終メディアが24bit(Dレンジ:144dB)ならこのピークレベル処理はほんのわずかで済みますが、CDクォリティの16bit(同:96dB)ならピークレベルを抑える処理が大きくならざるを得ません。また、周波数レンジも96kHzサンプリングなら、高域の波形変化を最低限に抑えて再現することが可能になります。

 ハイレゾ作品は、演奏の録音、ポストプロダクト、パッケージを経て我々の手元に届きます。もちろん、上述の通り録音現場の音をそのまま家庭用再生とすることは難しいので、最低限の加工がされているのは間違いありません。しかし製作過程から最終メディアまでハイレゾを用いることで、より高品質を保ちながら手元に届くことは、ユーザーとしても非常にありがたいことと思います。

ハイレゾ再生システム

 冒頭でハイレゾ再生には対応デジタル機器が必要になることをご紹介しました。この記事を読まれている方の多くはすでにSACD/CDプレーヤーをお使いだと思いますし、プレーヤー以降のアナログ部分はあえて変更する必要はありません。今後ダウンロードしたファイルやストリーミングプレーヤーなどを導入されても、アナログシステムの変更は不要です。国産機器の場合、いわゆるハイレゾマークがスピーカーにまで付されていますが、アナログ機器に関しては、ほぼ意味がなくちょっと紛らわしい気がします。ちなみにデジタル機器には、ハイレゾマークより、リニアPCM:***kHz/**bit、DSD:*.***MHzなどと最高フォーマットをロゴ化してくれた方がありがたいかもしれません。


上:ハイレゾロゴ
下:左からCD-DA、SACD、DSDのロゴ
CD-DA、SACD(マルチchは互換)は単一フォーマット、ハイレゾ、DSDには種類がある

 なお、システムをすべてデジタル化して、プレーヤーからパワーアンプまでをデジタル出力する場合においては、パワーアンプのデジタル入力フォーマットがハイレゾの最高フォーマットになりますので、システムアップや接続に際しては、あらかじめ調べておくことをお勧めします。

 ハイレゾをPC等を使用せず楽しむ方法としては、ストリーミングプレーヤー等を使用する方法があります。近年少しずつ機種も増えてきましたから、お好みのモデルを選ばれるとよいでしょう。また、ビジュアルを導入されている場合は、比較的新しいAV レシーバーでは、ネットワークオーディオ機能が搭載されている機種が多いので、それらを使う手もあります。なお、機種により対応するストリーミングサービスに少しずつ違いがありますので、検討の際はどのサービスに対応しているかをチェックすることをお勧めします。国内機種の場合、海外のサービスに対応していないことが多いので、海外サービスを使いたい場合には要注意です。


NASの操作画面の例
画面はQNAP社のもので設定等の操作はPCやタブレットから行える

 この他にネットワークオーディオではLANが必須になります。さらにダウンロードファイル再生にはマルチメディアサーバ(DLNA)機能を搭載したNASがをLAN内に設置する必要があります。ネットワークプレーヤーの多くはWiFiに対応していますが、安定性を図るなら有線LANを使用する方が良いと思います。また、高音質を狙う場合にはオプティカル(光)LANの導入が良いというお話もあり、石井式の設計をさせていただいたお部屋で体験させていただきましたが、音質面での有意性は十分に感じられました。ただ、残念ながら我が家はまだ有線LANで、その恩恵を確かめられるのはもう少し先になりそうです。この他、オーディオ用のスイッチングハブ、LANケーブル等選択肢も広がっていますので、今後じっくりと取り組まれることもお勧めします。

2023/1/10 HOTEI(松浦正和)

 
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