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オーディオシステムセッティング第12回:その他のヒント

ケーブルの取り回し

 調整作業が進んで来たら、まとめとしてケーブルの取り回しなどを整理していきます。プレーヤーやアンプの置き場所はほぼ確定していると思いますので、それぞれの機器を結ぶケーブルを整理します。たまにラックの裏でケーブルが入り組んで、いわゆるスパゲティ状になっているケースを見かけます。この状態は今後のメンテナンスを行うときに、ケーブルのもつれを解くなど、作業が困難になりますので、配線ルートごとに整理していきましょう。もし使用していない経路にケーブルがつながっている場合は外しておきます。

 ケーブルは通常Lch、Rchの2本で1ペアになっていますから、ペアごとに配線ルートを整理して、可能であればルートの長さに合わせたケーブル長として、極端に長く余らないようにできればベストです。ただし、ケーブルに不要なテンションがかかるほど、短くしてしまうのは、アンプの端子やケーブルにストレスがかかり、音質上も好ましくないので、わずかに余裕を残した状態とします。また、信号ケーブルと電源ケーブルはわずかでも良いので離れたルートを確保するのが良いでしょう。もちろん、各々のお部屋によって条件は変わってきますので、この条件を成立させるのが難しいケースもあると思いますが、ケーブルの長さなどは工夫ができると思いますので、できる範囲で対応いただければと思います。


ラック背面の例
ケーブルのもつれなどを避けるために長さ1m、1.5m、2mと長さの違うものを場所によって
使い分け、配線ルートも可能な限り最短かつ無理な重なりを避けるよう通線している
また、メンテナンスのため、ラックと壁の間隙を広めにとっている

 これはよく聞かれる質問で、パワーアンプへの信号ケーブルと、スピーカーケーブルのどちらを長くするかという問題です。プリメインアンプなら操作性の観点から、アンプはラック側に置き、スピーカーケーブルを長くします。セパレート方式であれば、プリ・パワー間を長くとり、スピーカーケーブルを短くします。個人のお部屋サイズでこの長さはあまり問題にならないと思いますが、スピーカーケーブルはやはり電力を扱っていますので、短くしたいという狙いと、パワーアンプをラックと分離することで、上記のケーブルの整理をすっきりしやすい、という狙いもあります。

 ちなみに、このサイトのトップページからインスタグラムへのリンクがあり、そこから今まで設計、セッティングさせていただいたお部屋の写真を掲載させていただいております。一部の除きほとんどのお部屋でスピーカー側にパワーアンプを配置しているのをご確認いただけると思います。ラックはリスニングポイントの右か左に配置しています。注目点としては、プリ・パワー間の長いケーブルは床の上は通らず、壁に設定した配線ピットを使って配線されています。床にケーブルがあるとケーブルを踏んだり、足をひっかける恐れがありますので、人が通りそうな場所にケーブルを通さない配慮は大切で、特にシアターを利用する部屋では、ケーブルによる事故防止のためにも大事なポイントになります。

オーディオラック

 ラック配置の話が出ましたので、ラックの配置についてもお話しします。上記のようにラックはリスニングポイントの前に置かず、左右のいずれか少し離れた場所に置きます。石井式リスニングルーム研究の過程で、あらゆる部屋で様々な計測を行いましたが、リスニングポイントの前にラックを置いた場合と、そうでない場合の計測結果を見ると、ラックが前にあると中高域で伝送特性に暴れが見受けられました。これはローテーブルなどでも同じですので、現在ラックは左右のいずれかに置き、スピーカー、リスナー間には物を置かないレイアウトを推薦しています。


リスニングポイントの前には何も置かず、ソファーに差し込むタイプの
サイドテーブルを利用
ラックは縦3列でアンプを含めた高さは900o以内としている

 さらに伝送特性の計測で見つかった、左右スピーカーの間の高い位置にラックがある場合も中高域での影響が認められます。それを避けるためラック等をスピーカー間に配置しなければならないときは、スピーカーの中高域ユニットより低い位置に収まるよう対処を行います。またスピーカー間にディスプレイを置く場合は、伝送特性の乱れを防ぐため、音楽再生の時は布製のカバーをかけていただけるようお願いしています。電動ロールタイプのスクリーンであればこの問題は避けることができるので、基本的にはプロジェクターの利用をお勧めしています。

 オーディオラックには多くの製品がありますが、現在、柱と棚板を組み合わせたタイプが主流となっています。以前多かった箱型より開放的で自然な音質が得られやすく、棚板の水平が確保しやすいこと、配線作業がやりやすいというメリットもあり、多くの方に受け入れられています。また、棚板の段数が自由に変更でき、組み合わせによって高さが変えられる点も使いやすいポイントです。この高さを変えられるという利点を活かして、ラックの高さを棚板上の機器も含めて90cm以下にすることで、壁からの反射音を妨げないように設定するのもお勧めです。通常のソファーに座った時のリスナーの耳の高さはおおよそ1mですから、それより少し低くなり最低限の操作性の確保を狙っています。
 また、このように低く設定した場合、ラックは横に伸ばして収納数を稼ぎますが、その際隣り合ったラックの棚板が、互いに接触しないように置くのが良いでしょう。


横に並べたラックは棚板が接触しないよう隙間を確保している
棚板はアンプ等を乗せる重要な役割を持ち、接触しているか
していないかで音に変化が現れる場合がある

 もちろん、お勧めしてきた内容は、専用の部屋ならともかく、一般的なリビングなどでは、このような対処は非常に難しくなると思いますが、音響的部分での測定結果や聴感での検証があるということを念頭に、可能な範囲で配置や使いこなしをお試しいただければと思います。

システムの総合バランス

 一通りの作業を済ませたら、再度全体のバランスを再度チェックしましょう。今回の記事でケーブルの取り回しやラックの配置のお話になりましたが、本来は伝送特性からシステムのレイアウトを行う時点で考慮しておくべきポイントで、話が前後してしまい申し訳ありません。しかし、システム調整はひとつ進めた後に、一歩戻り先の調整を再度見直すなど作業をループしながら進めていくことが多くなりますので、すべてのバランスを思った方向に収束させていくための手順とご理解ください。

 ひとつの手順ごとに音楽を聴いてのチェックを行ってきましたので、ある程度調整を進めた段階では、結果に大きなズレがなく収束の方向に向かうと思います。そして、さらに時間をかけていろいろな音楽を聞くうちに、また気づかれる点も出てくると思います。その際は、またシステムの一つひとつをチェックしてください。わずかの調整で気になる点が解消できるかもしれませんし、さらにじっくりと調整を加えることになるかもしれません。繰り返し繰り返しの調整が、一歩ずつ理想に近づくたびに、音楽を聴く楽しみが深まっていきます。この時の喜びは忘れられない体験となります。オーディオの深さは音楽そのものの深さに由来するのでしょう。ぜひ、多くの方々とこの喜びを分かち合えることができれば幸いです。

セッティングのご相談について

 個別のお部屋の場合お部屋の数だけパターンがあり、個人の好みに合わせるという課題も含めると、とても一般論で対処できないケースも多々あります。その場合はお気軽にメール等でご相談をお寄せください。セッティングなどメールでお答えできる範囲でしたら、特に費用をお願いすることはありません。また訪問してのセッティングのご希望もお受けいたします。こちらは事前にお部屋の情報などをいただき、十分ご相談の上対応させていただきます。
 併せて石井式リスニングルームのご体験をご希望の場合は、拙宅のリスニングルームをご見学いただけます。こちらもまずはメールでご相談ください。

2022/12/6 HOTEI(松浦正和)

 
 *本稿でご不明な点、ご質問などございましたら「こちら」までご連絡ください。

 スピーカー位置の検討についてのご質問では、お部屋の写真を添付いただけると、イメージがつかめます。その際は正面、後方、左右、天井方向の写真とごく簡単で結構ですので、お部屋の縦横高さの寸法をお送りいただけましたら助かります。

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