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オーディオシステムセッティング第4回:フォーカスチューニングの応用

 前回のフォーカスチューニングの記事はいかがでしたでしょうか?文章にするとかなり抽象的な伝え方になったかもしれません。私が普段行ている手順自体がかなり感覚的な作業ですので、時間がかかると思いますが挑戦していただければ、必ず良い方向がつかめると思います。

フォーカスチューニングの応用

 さて、今回のこのフォーカスチューニングから派生したテクニックを、お伝えしていきたいともいます。今まではすべてのユニットがまとめられたスピーカーシステムを想定したチューニング法をご紹介してきましたが、各帯域のユニットが分離したシステム、例えばアルテックのA7など低域キャビネットと、高域ユニット(ホーン)が分離されたシステムのチューニングや、一体型スピーカーにスーパートゥイーターを追加したシステムの調整にもこのフォーカスチューニングが応用できます。

 これらメインキャビネットと分離され、相互の位置を決める必要があります。理論上は各ユニットのボイスコイル位置を合わせるのが良いとされていますが、ボイスコイルの位置をユニット外観から見ることはできませんし、正確に計測しても位置を合わせるのはかなりシビアなセッティングになります。また、ボイスコイル位置を垂直方向に合わせるのか、リスニングポイントつまり耳の位置からの距離で合わせるのかで、結果が異なります。そこで、これを聴感で合わせてしまおうというわけです。

ユニット間の位置合わせ

 一体型のスピーカーシステムの場合は各ユニット間の位置合わせはできませんので、リスニングルームの空間で各ユニットが自然につながるように調整を行ったのがフォーカスチューニングです。これを応用して、ユニット分離型のスピーカーの位置調整を行います。手順は低域から位置決めを行い、次に中高域のバランスを整えていきます。そして最後のフォーカスチューニングで動かすのは、スピーカー全体ではなく高域ユニットを動かして、全帯域が空間でバランスするようにチューニングを行います。


 手法はフォーカスチューニングで用いた方法と同じです。センター定位のヴォーカル中心のソースを選び、片チャンネルのスピーカーの前に立ち、各ユニットの音がおおむね空間合成される位置で演奏を聴きながら、音像のでき方、音場に違和感がないか、高域が素直に伸びているかなどをチェックしながら、高域ユニットを少しずつ動かして、最適位置を見つけます。片チャンネルでこれらの再生に違和感がないところが見つかれば、ベースキャビネットと高域ユニットの位置関係を記録し、もう片チャンネルはその記録に基づいた位置から調整をスタートします。今までのチューニング法と同じで、片チャンネルで計測した位置と微妙に異なる場合がありますが、あくまで部屋や他のユニットとの関係で微妙に異なるケースがありますので、感覚を優先していただければと思います。調整で動かすたびに中央あるいはリスニングポイントで、チェックを行い、もし音像のずれや、音場の広がり方、高域の伸びなどに左右差が感じられる場合は、さらに細かくチューニングを行います。

 一体型スピーカーにスーパートゥイーターを追加している例では、まずメインスピーカーのみで、位置調整、フォーカスチューニングを行い、その後にスーパートゥイーターの位置合わせを行います。手法は前述の分離型スピーカーでの手順と同じです。

 いずれの調整も、片方ずつのスピーカー直前(30cm〜50cmの位置)で聴いた時に、違和感なくすべての帯域のブレンド感が整っていれば、可能な限り左右で均質なバランスが取れていれば、リスニングポイントでも違和感のない音楽表現が現れます。

調整位置の結果が左右で異なる

 フォーカスチューニングを行った結果、左右で部屋に対しての位置が微妙に位置が異なることが多くなります。第2回の記事では、中高域のバランスをとった際に部屋に対するスピーカー位置をメジャーなどで計測して左右を合わせると紹介しましたが、フォーカスチューニングで動かすことで、位置がずれる(部屋に対して)ことになります。また、分離型、トゥイーター追加型でキャビネット間の位置が左右でずれる結果になります。

 これにはいくつかの理由が考えられます。まず、部屋は完璧な長方形ではない、ということです。石井式も含めてですが、建物を立てる際の精度はおおよそミリ単位の誤差は許容されます。部屋の対向する壁間の距離を測ると、計測位置によってわずかずつ違いが出ることがあります。一般的な戸建ての場合、木質部材が多用されますし、RC(コンクリート)造りでも打設枠の精度もやはりミリ単位です。

 もちろん、部屋を使う上でこれらの誤差は全く問題になることはありませんが、音楽再生を行う場合、それぞれの帯域での定在波は部屋の寸法に影響を受けますので、特に波長の短い高域で整合性を得る場合のスピーカー、ユニット位置と部屋の関係が完璧にならないケースが多いのはこのような要因もあるのではと感じています。

 さらにこの部屋以外にももう一つの要因として考えられるのが、スピーカー特性の左右差です。もちろん、きちんとしたスピーカーであれば、左右で音色の違いや音圧の違いが感じられることはありません。しかし、工業製品である以上製品に対する出荷基準に許容誤差が設定されていると考えられます。これはかつて石井さんとダイヤトーンの佐伯多門さんとお話ししたときに「スピーカー(ユニットを含む)製品の周波数特性をすべて1dB 以内に収めるのは至難の業」、「事実上不可能」という会話がありました。もちろんグレードのより許容基準は異なるかもしれませんが、工業製品として許容誤差範囲で出荷しているということで、逆に言えば左右スピーカー間には微妙な誤差が可能性としてある、といえるかもしれません。もちろん、先に書きましたように、音色や音圧の違いがわからないほど微妙な差ですし、グレードの高い機種ではユニットのマッチドペアを採用している可能性もあります。この点はユーザーが気にするほどの問題ではありませんが、ステレオ再生を行い、フォーカスチューニングを行う上では、この微妙な差のために位置調整が異なる現象が起こるのかもしれません。

スピーカーの設置条件について

 本来フォーカスチューニングの前にお伝えすべき情報ですが、スピーカーの足元について考えてみたいと思います。スピーカーを設置する床としては、やはりフローリングなどの木質系素材の上に設置するのが良く、できればより振動しにくい強度の高い床が、音質的に有利になります。石井式設計の場合は、コンクリート直張り(1階の場合)、が多く、2階以上なら床の下地を強化することで、床の強度向上を図っています。

 この床にスパイク受けを介してスパイク設置がお勧めです。これは、コンパクトスピーカーでスタンドを利用する場合も同様です。我が家のSB-M1のように箱型でスパイクが装備されていない場合は、木製キューブで設置するのが良いと思います。これは設置面積を小さくすることで、極力がたつきのない設置を考慮しています。ご存じの通りフローリングは広く見れば平面ですが、小さく見ると板目ごとに微妙にデコボコしていますので、ボードなどの面積が広いと多くの点で支えるような格好となり、場合によっては設置にがたつきがでます。

 なお、スパイクを装備しているスピーカーの場合は、取り付け位置が設定されていますが、箱型(ブックシェルフ)などに木製キューブを用いる場合はキューブの位置により、キャビネットの底板の振動をコントロールすることが可能です。スピーカーの種類、使い手の好みにより支える位置を変えることができますので、いろいろと試してお好みの位置を探してみると良いと思います。

 床強度に心配がある場合は、オーディオボードや大理石を用いる場合も考えられますが、床の状況やスピーカーによって相性があるように思います。特に大理石や、単純な合板などをご利用の場合は、ボードの有無での音をチェックしましょう。フローリングの状況によりボードなしの方が良い場合もあります。また、大理石のように強度のあるものなら大理石の下側にさらに5o厚の木製スペーサーを挟むなど、接触面積を小さくすることで、音が安定する場合があります。

 ビンテージスピーカーに見られるいわゆる「はかま」のあるタイプもフローリングに設置する場合がたつきが考えられますので、この場合は5o厚くらいの木材を用いて3点か4点で支えることで、がたつきを抑えることができ、確実に音色が向上します。ちなみに近年のタンノイはデザイン上「はかま」がついていますが、底板にはスパイクが仕込まれていますので、はかまから見えない程度にスパイクで浮かすという手法が良いと思います。

スペーサーの例:コクタン製 50×50×5o(左)  50×50×10o(右)  

 フローリング中心にお伝えしましたが、カーペットの場合は床の傷を気にされないならスパイクのダイレクト設置をお勧めしますが、可能であればスピーカー部分のみカーペットのない状態が良いともいます。そして、畳の場合は大変申し訳ありませんが、まだ良い解決策を見出せませていません。

 スピーカーの調整の記事はこれで一区切りとなります。位置についてはスピーカーと部屋の関係でしたが、設置に関してはスピーカーと床の関係です。組み合わせは無限大ですので、皆様のお部屋の条件で良い位置、設置方法は異なってきます。気持ち良い音楽再生、良い音を目指して、いろいろとスピーカーを動かしてみるなど、チャレンジしていただければ、皆様個人個人のお部屋で良い結果が必ず見つかります。ぜひお試しいただければ幸いです。

 次回からは、スピーカー以外の調整法について進めていきたいと思います。

2022/9/20 HOTEI(松浦正和)

 
 *本稿でご不明な点、ご質問などございましたら「こちら」までご連絡ください。

 スピーカー位置の検討についてのご質問では、お部屋の写真を添付いただけると、イメージがつかめます。その際は正面、後方、左右、天井方向の写真とごく簡単で結構ですので、お部屋の縦横高さの寸法をお送りいただけましたら助かります。

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