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オーディオシステムのセッティング第2回:スピーカーセッティング

スピーカーの位置出し

 前回ご紹介した準備が整いスピーカーを設置する方向が決まったところで、今回はいよいよスピーカーの位置出しについて話を進めていきます。基本的な位置出しはスピーカーから再生される帯域バランスを整えることが目的となります。作業は低域、中域、高域の順に進めていきますので、まずは調整用音源として低音が強調され、演奏中常時低音楽器が演奏されている音源を用意します。ジャズフュージョンやポップスなどの音源が向いていると思います。もちろんクラシックでも常に低音楽器が鳴っている音源なら大丈夫ですが、オーケストラの場合、コントラバスが右チャンネル定位している場合が多いので、低音楽器がセンター定位しているポップスなどの方が使いやすい音源といえます。もちろん、調整中は通常のステレオ再生で、トーンコントロールやラウドネスはフラットの位置に、グライコ使用の場合はバイパスにて作業を行います。

 音源の準備ができたら、少し大きめの音量で再生しながら、左右いずれかのスピーカー付近で、低域が一番大きく聴こえる場所を探します。この際、最も低い音域が良く聞こえる場所を意識して探しましょう。最低域までしっかり聞こえる位置を見つけたら、スピーカーをその位置まで動かします。片チャンネルを移動したら、もう片チャンネルのスピーカーも部屋の対象位置に動かします。

 この時点でスピーカーはまだ何度も動かしますので、比較的軽いスピーカーは大丈夫だと思いますが、重量級の場合は毛布や玄関マットの滑る面を床側に敷くことで移動しやすくするのが、床面に傷をつける心配もないので良いと思います。また、この時点でスパイクは外しておいても大丈夫です。

 もし、上記の方法でなかなかうまく場所を特定できない場合は、まずはスピーカーを大胆に動かしてみて、リスニングポイントで、聴きながら位置を探っていきます。慣れないうちはその都度リスニングポイントでチェックする方が良いと思います。スピーカーを大きく動かすことで、低域のバランスが刻々と変化していきますので、思い切って部屋のコーナーや正面壁、側面壁に寄せたり離したりしながら試してください。よく言われるスピーカーは壁から〇〇p離すといったことはいったん忘れて、ありえないと思えるような場所においてチェックすることも経験になりますので、ぜひお試しいただければと思います。なお、背面にポートのあるスピーカーの場合は、ポートを壁面で塞いでしまわないようにしていただければ大丈夫です。伝送特性は、部屋とスピーカー、リスニングポイントの関係で決まります。意外なところでバランスが良い場所があるかもしれません。先入感を一度取り払って挑戦してみてください。

 前回でご紹介した部屋の長辺側にスピーカーを置く方法を選んだ場合、低域を中心に場所を探すと、左右スピーカーの間隔がかなり広くなってしまうと感じるかもしれませんが、低域の量感が得られるバランスをしっかりとることで、いわゆる音像の中抜け現象は感じられなくなるので、それほど心配する必要はありません。この後の中域以上の調整や内振り角度などで、そういった部分も調整していきますので、この時点であまり気にしなくて大丈夫です。

 低域を十分再生できる場所が決まったら、次は中域以上のバランスを整えていきます。

中域以上のバランス調整

 低域がしっかり再生できる場所が決まったら、その低域と中域のバランスを調整していきます。この作業では、位置とともに内振り角度も調整していきますので、まずは内振り角度について説明します。ここでのソースはすでに低域の量感を引き出せていると思いますので、ヴォーカルなどのソースで、声の質感なども確かめながらのチェックがわかりやすくなります。作業手順ですが、右でも左でも結構ですので、片チャンネルを移動したら、もう片方はそれに合わせた角度、場所に置いてリスニングポイントでチェックを繰り返します。


1.壁と並行から少し内振り
音像が少し前寄りに展開して、部屋の響きは抑え気味でく、音像重視のセッティングになります。長辺セッティングでは中央音像の実態感が少し薄めになる傾向になりますが、しっかりとした低域再生を確保することで、音像をより強く表現に適したセッティングに向いています。

2.スピーカー音軸をリスニングポイントに
音像、音場はかなり前よりになります。部屋の響きがかなり抑えられて聴こえ、ニアフィールドリスニングのような聴こえ方にすることもできます。完璧にフォーカスが整うと、ヘッドフォンで聞いているような頭内定位にすることもできます。

3.スピーカー音軸をリスニングポイントよりさらに内振り
部屋の残響を最大限に利用して、音に包まれたような響きを得られやすくなります。長辺セッティングではこの角度でのセッティングを好む人が多いように思います。内振り角度により、音場の広がり方が調整できますが、部屋や、スピーカごとに効果は異なってきます。そこには、もちろん聴き手の好みでどんな角度を選ぶかが調整の大きなポイントになってきます。

 

 

 1,2,3の内振り角度の大まかな傾向をもとに、ご自身が好ましいと思える内振り角度を付けながら低域と中域以上のバランスを整えていきます。動かす範囲は部屋の広さにも関係してきますが、12畳以上なら7〜8p内外。10畳以下ならおおむね5p以内の前後左右でバランスの良い場所が見つかると思います。この作業は、慣れてくるとスピーカーの付近で聴きながら行えますが、慣れるまでは、「動かす→リスニングポイントでチェック」の繰り返し作業の方が確実なチェックができます。時間と労力が必要になる作業ですが、ここでのバランス調整が最終的な結果を大きく左右しますので、じっくりと取り組んでいただければと思います。

 なお、3の内振り角度調整での補足ですが、内振りを強めていくとあるところで、高域が急激に落ちるポイントが出てきます。これは、高域ユニットの指向特性によるもので、一般的にホーン(コンプレッションドライバー)型は指向性が狭い傾向にあり、ドーム型では指向性が広い傾向にあります。ユニット、エンクロージュアによって様々に変わってきますので、スピーカーシステムごとに内振り角度の限界点が決まってきます。お使いのスピーカーに合わせて、高域の落ちすぎない範囲で内振り角度を調整してください。

 低域から中域以上のバランスが整ったら、ここで、普段お聞きになるソースをチェックします。ジャズ、ポップスならベースとその他の楽器、ヴォーカルなどのバランスが思った感じに再現されているか。クラシックならヴァイオリンからコントラバスまでのバランス、木管がやせすぎず、金管が鋭くなりすぎないかなどのバランスをチェックします。また、左右の音場感が整いスピーカー間にひとつの音場空間として認識できるようなっているかもチェックします。もし、思ったようなバランス、空間表現になっていない場合は、さらに位置や角度の微調整を行います。
 定在波の関係で、数cm動かすだけでも大きく変化するポイントもありますので、時間をおかけても良いバランスと思える場所を探しましょう。

 ここまで進むとあとは最後のフォーカス合わせになります。最後の作業前に、両チャンネルの位置を正確に合わせます。左チャンネル基準で作業している場合は、左のスピーカー位置を基準に右スピーカーの位置を合わせます。この際は、目視でも良いですし、正確に合わせる場合はメジャーを使って正面壁、左右壁からの距離、角度を合わせましょう。

部屋の対してシンメトリに置けない場合 

 もし、部屋に対してスピーカーをシンメトリに置けない場合は、正面壁からの距離と内振り角度のみを合わせ、左右壁からの距離は、聴こえ方のバランスで位置を決めます。完全に一緒にはなりませんが、聴感上違和感を感じない場所を探しましょう。このようにシンメトリで置けない場合や、家具や設備の条件があり左右壁で反射音の状況が大きく異なる場合は、片側のスピーカーの位置、内振り角度を少し変えて、聴感上部屋全体の響きや大まかな定位に違和感のない角度を探します。これは両方のスピーカーをパッと見た時、内振り角度の違いに気が付かない程度の調整で大丈夫だと思います。見た感じで違和感があると聴感にも影響を与えますので、視覚的に違いがほとんど分からない程度を目標として、あくまで聴感を優先して決めてもよいと思います。

 ここまでの作業が完了すれば、この時点で音楽再生はかなり良い感触になっていると思います。そして作業は最終段階に入りますので、ここまでスピーカーを移動しやすくするため、マットや毛布を利用していた場合は、スパイクスタンドなど本来の置き方に戻しましょう。この作業でスピーカー位置は微妙にずれる可能性はありますが、メジャーなどで測った位置に戻せば問題ありません。

 次回は最終作業のフォーカス合わせについて書いていきたいと思います。

2022/8/30 HOTEI(松浦正和)



*本稿でご不明な点、ご質問などございましたら「こちら」までご連絡ください。

 スピーカー位置の検討についてのご質問では、お部屋の写真を添付いただけると、イメージがつかめます。その際は正面、後方、左右、天井方向の写真とごく簡単で結構ですので、お部屋の縦横高さの寸法をお送りいただけましたら助かります。


 

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