HOTEI'S Note Index

久々のシステム調整

 私のリスニングルームの完成が2017年8月、2023年の今ちょうど6年目に突入します。木質系素材を多用する石井式リスニングルームの場合、最初の1年の変化が最も大きくその都度変化に対応させるよう、スピーカーの設置位置を調整してきました。2年目以降は変化の速度がゆるやかになり、頻繁に調整するということはなくなっていました。そして、丸5年を経過してかなり落ち着きを感じていますが、それでもわずかな変化はあります。このところリスニングルーム設計のご相談が重なっていたのこともあり、3か月ほど前から気になりだしていたのを、サボっていましたが、先日少しまとまった時間ができたので、重い腰を上げ気になった部分の修正を行うことにしました。


調整前、調整後の写真を撮りましたが、調整範囲が小さく
見た目の違いが分からず、調整後の1枚のみを掲載

 先に述べた通り、石井式リスニングルームは床、壁と木質系素材を多用していますので、素材の水分含有量が安定するまで少し時間がかかります。もちろん、日本で使用される建築部材のほとんどは乾燥材が使用されますが、実際に施工した部屋での湿度変化になじむまでには、やはり時間が必要です。もちろん、5年も経過すると木材に「枯れ」が進んで、ほぼ安定域に入りますが、それでも冬の乾燥期、夏の多湿期という変化があるのは、日本に住んでいる限り避けようがありません。

調整作業に取り掛かる

 さて、実際の音の変化ですが、少し前から中高域が少し目立ちぎみになってきて、もともと私の好みで量感たっぷりの低域と、伸びやかな高域といったバランス、いわば少しドンシャリといえなくもないセッティングになっています。これが部屋の乾燥度「枯れ」が進んだことで、中高域が強めに感じるバランスに変化してきたのでしょう。聴き手によっては、こちらの方が好みと思う方もいらっしゃるでしょうが、私の感覚では音楽表現が少しきつく感じ始めていました。もちろん、今までもこういった変化をしてきましたが、今回は少し長いスパンでの変化だったので、ようやく取り組み余裕にたどり着いたといったところです。

 調整は現状の部屋に合わせて、スピーカーの新たなベストポジションを探ります。中高域が少し元気になってきて、それを抑える場合、問題の帯域を抑える手法もありますが、中低域つまり300Hzから600Hzあたりを持ち上げるという手もあります。低域の表現は問題なく、高域側は抜けもよく、解像度も問題ありません。そこで今回は後者の手法、つまり中域より少し下の帯域をわずかに持ち上げる位置を探るのがよさそうだと判断しました。私の部屋の広さなら、この場合多くても1.5cm以内の範囲で、目的のポイントが見つかるはずと判断。スピーカーの近くで中低域を中心に意識して少しバランスが持ち上がったポイントを探ります。

 ご存じのようにスピーカーの指向性は、低域は広く、高域になるほど鋭く、狭くなっていきます。したがって、中低域あたりまでは、スピーカー直近の位置でも部屋の定在波モードの影響を大きく受けますので、スピーカーに近い位置で聴いて帯域バランスを確かめることができます。具体的には女性ボーカルが痩せることなく、適度なボディー感の表現になるよう進めるのが今回の目的に沿ったやり方といえます。音楽を鳴らしながら、スピーカー近くのいくつかのポイントで、注意深くバランスを確認し、好ましいと思える場所を探った結果、現状のバッフル面から1pほど前でよさそうな感触を得ました。あとはこの場所で良いかどうかは、実際に動かして確認するだけです。


Technics SB-M1の指向特性(メーカーカタログより)
スピーカー正面2mから0度(赤)、30度(青)、60度(黒)

作業手順

もう一度手順を整理すると
〇スピーカー直近で音楽を聴きながら、バランス良い位置を探す
〇その結果から想定位置を決める
〇スピーカーを動かす
〇リスニングポイントでバランスを確認
〇確認して良ければ、スイートスポット調整を行なう
〇最終確認を行い、OKなら調整終了

 今回はこのコラムに書くつもりでしたので、事前、事後と念のため計測しておくことにしました。最終的な結果は左チャンネルで8o前方に、右チャンネルで9o前方に動かしました(スイートスポット調整まで完了した時点の数値)。また、比較写真も撮っておいたのですが、移動移動距離が小さくどう見ても違いが分からないので、冒頭の写真だけとしました。
 今回は中低域の量感を少し持ち上げるという内容でしたので、上記のように、チェック用のソースは女性ボーカルを中心に使用しました。今までも女性ボーカルが口先だけではなく、生身の人間がそこで歌っている感じは出ていましたが、そこに大人びた落ち着きと表現の妙が加わったように感じられました。

アッテネータは補助的な補正に

 我が家で使用しているSB-M1の場合、アッテネーターがついているので、それを利用しての調整も可能でしたが、様々な音楽への対応や、質感を重視した場合、少し大変な作業になりますが、スピーカーの位置調整で対応した方が良い結果につながります。したがって、今回は位置調整を基本に、アッテネーターはユニット間のつながり重視で、ごくわずかに調整しただけです。調整に用いた女性ボーカルの質感は上記の通り。私が好んで聴くR&Bや電子楽器を多用したジャズなどのダークな質感が少しマイルドになったので、それをわずかにアッテネーターで補正して、より多くの音楽ジャンルが思うような質感で聴けることができるようになりました。

 今回の内容もそうですが、システムのセッティングがそれなりに安定期に入っているといっても、長年の間に少しずつ変化があるのは仕方ががありません。もし、思っている音楽表現や質感と、少しずつずれが出てきた、あるいは以前のような表現が感じられない、といった状況でしたら、一度セッティングを点検されることをお勧めします。

2023/8/2 HOTEI(松浦正和)

 
 *本稿でご不明な点、ご質問などございましたら「こちら」までご連絡ください。

 スピーカー位置の検討についてのご質問では、お部屋の写真を添付いただけると、イメージがつかめます。その際は正面、後方、左右、天井方向の写真とごく簡単で結構ですので、お部屋の縦横高さの寸法をお送りいただけましたら助かります。

HOTEI'S Note Index

<BACK